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3日後の昼間、脩の携帯が鳴った。

「もしもし、ネクスモバイルの樋口です。先日は面接ありがとうございました」

「いえ、こちらこそありがとうございました」

「面接結果ですが、洗車・回送部門で採用ということになりましたので」

「そうですか。ありがとうございます」

「早速ですが、いつから勤務できそうですか?」

「いつでも結構です」

「じゃあ、色々と支度もあるだろうから来週の10/1から勤務でいいかな?月初だし」

「ええ、構いません。宜しくお願い致します」

「では10/1の9:00に事務所に来てください。当日は特に持ち物は無いので」

「はい、宜しくお願い致します」


 初出勤日の10/1、脩は「ネクスモバイルS営業所」へと向かった。

「おはようございます。今日からお世話になる宗像脩です」

「あ、宗像さんね。今日から宜しくね」

にこっと愛想よく挨拶してきたのは小柄で眼鏡をかけた女性だった。

「事務の高橋怜子です。作業以外で分からないことは私に聞いてね」

「ありがとうございます」

優しそうな感じではあるものの、どこか無機質な印象を受けた。事務方の対応としてはそんなものだろうか。

「じゃあ、こちらへ」

 怜子は脩を事務所の奥に誘導する。従業員の部屋があるようだ。入口から事務所の脇を通っていく。脩はその道中、事務所内の様子を横目で伺った。事務所内には誘導する怜子の他に2人、机のPCに向かって何やら作業している。一人は男性、一人は女性で共に怜子より若いようだ。脩は顔を上げた2人に軽く会釈したが、ちらっと様子を伺っただけで、特に言葉を発しなかった。

事務所の後部に、空席がある。向きが反対になっているので怜子の上役がいることが推察される。後に出勤するのであろうか。

「ここが従業員のロッカールームね」

怜子は廊下の左側のドアを開けると、衣服等を掛けるロッカーが左右10個ずつくらい並んでいる。然程広い空間ではない。

「今は結構空いてるからどこを使っても構わないから」

「そうですか。じゃあ一番奥の右を使っていいですか?」

「ええ、後で名札を渡すからロッカーに挿しておいてね」

並んでいるロッカーで名札があるのは全部で7つ。右側に3つ。左側に4つあるようだ。

「こちらの営業所は全員で何人いらっしゃるのですか?」

「えーっと、営業が3人、工場が2人、事務所が私を含めて4人だから9人ね」

「事務所の奥の机は所長さんの席ですか?」

「ええ、樋口の席よ。面接したでしょ?」

「ああ、樋口さんは所長さんでしたか」

「まあ、事業所といってもこじんまりしてるわね。あとで作業服持ってくるからちょっと待っててね」

「はい。あ、トイレはどちらですか?」

「廊下をでてすぐ前の扉よ」

「すみません、ちょっと行ってきます」

自分が使うロッカーの扉をあけながら、退出していく怜子に告げた。

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