イエスの憂鬱

石橋 叩

第1話 その時を知らぬ者の祈り-羊と山羊を分けるとき

父よ、あなたの時は、

私の時よりも深い。


あなたの光は、

私の影の底にまで届く。


あなたは御手に刻む、

世界の終わりと始まりを。


しかし私は知らぬ、

その日、その時を。


天は沈黙し、

星はただ瞬き、

大地は息を潜める。


私の胸は鳴る――

まだ来ぬ鐘の音のように。


羊は眠り、

山羊は野に散る。


私はただ見守る、

父の御心が満ちるのを。


風が道を開くとき、

水が石を裂くとき、

あなたの命じた時は来るだろう。


そのとき私は立つ。

右と左のあいだに。


喜びの涙と

嘆きの沈黙との境に。


そのとき私は語るだろう。

「父よ、あなたの御名は正しきかな。」


そして沈黙のうちに、

すべては安らぐ。

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