第4話

 今日は姉に頼まれ姪っ子の機種変更に行った。勤め先の最新機種をタダで寄越せという可愛いおねだりを「社会を舐めるな」と笑顔で返し、初夏を目前に控えた中、姉を伴いショップへと赴いた。ちなみに旦那さんは休日出勤とのことだ。回線屋はどこも忙しいようだ。

 僕の家から車で1時間と少しばかり、軽いドライブ感覚で行ける所に居を構えたのが運の尽きだろうか。こう言う時は便利に使われるが、特に仲が悪いわけでもないので悪い気はしない。

 2人を拾ってから互いの近況を交換しながら20分弱車を転がせば目的地。向かいには知らないメーカーの飲料が詰め込まれた格安自販機があった。帰りに一本買ってみようか、そんな話をしながら自動ドアを潜った。


 さて、昨今の携帯機事情は十年前から変わらない。いつも通りリール付きのケーブルがあり、電話機能と感熱式のファクス機能。各社の競争も熱が冷めたのか似たような機能とスペックばかりだ。

 まあ、携帯機なんて電話帳と電話機能、それとファクス以外に求めるものがないのだから、どれだけ付属アプリが豊富だろうが、万歩計機能や方位磁石機能が付いてようが、対して意味はない。それは姪っ子も同じようで、結局はキャラクターとコラボしているエントリーモデルで落ち着いた。

 店内の回線コネクタに接続して動作確認し、予備のファクス用紙をついでに購入してショップから出た。

 日は高くまだ辛うじて乾いた暑さを感じ、店内の涼香を早くも感じた。


 それから遅めの昼ごはんを食べにファミレスへ行き、姉と姪っ子を送り届け、家に帰った。

 家に帰るとファクスが届いていた。

「おじさんありがと。帰りに謎ジュース買えなかったね。今度来たら買いに行こう!」

 手書きのかわいらしい文字だった。番号を見ると、早速あの機種から送ってくれたようだ。

 さてと。僕から返信しないと。仕事以外で久々にペンを握った。文明の利器に、僕は飼い慣らされていた。安定しない筆跡に、僕はそう思った。

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