つながる世界

Welchelant

第1話

 『アメリカの大手電子機器メーカー、モバイルPC市場にモンスター級マシンを今冬リリース予定。LANポートを4つ搭載し、物理的にも全4重通信も可能!』

 アメリカの超大手電子機器メーカーが、新たなモバイルPCが出ると言うニュースだ。タイトルにもある通り4つのポートが特徴ではあるが、記事には2世代前のハイエンドクラスCPUと同等のスペックを持つCPUを設計開発し、基礎スペックの向上しつつ使用電力と発熱を抑えた、まさにモンスターと言える仕様になるとの事だ。

 確かに4ポートは一般人目線からしても目を引く魅力がある。回線が増えすぎた結果、顧客を囲い込むため専用コネクタが台頭しつつあり、モバイルPCを持ち運ぼうなら契約している回線事業者を変更しながら使うか変換器を持ち運ぶかしなければならない。しかし、4ポートとあれば主要な回線事業者はカバーできるため、ポートごとに契約を変更する手間が省けるだけでなく、場所を選ぶ手間も減る。

 とはいえ、ここまでのスペックが必要な状況はあるのだろうか。まあ、僕のようなユーザーでは持て余すことは間違いない。例えば、カフェを渡り歩いてモバイルPCで仕事をするような人であれば需要はあるだろう。会社なら無料でコーヒーを飲み放題なのだから勿体無い人たちではある、と思うのは単に僻みであろうか。

 ここで終えてしまうと単なる記事紹介になるので、少し関係のある話を付け加えておこう。

 僕の会社で同じ4ポートマシンの開発をした時の話だ。

 通常のサイクルは分からないが、僕の会社での企画開発では3年後のリリースを目標として始める。……まあ、結局リリースできないこともあり、この4ポートマシンはそのうちの1つだ。

 さて、4ポートをモバイルPCに設けるというのは、他のハードウェアが物理的に割を食う。削られやすいのはバッテリーだが、昨今のニーズはバッテリーの持ちも重要視される。キーボードやその他実装部品のサイズを変えるのも難しいため、じゃあどうするのかと言うと、サイズを大きくするしかない。

 だが、小ささというのも1つのニーズであるから、それを実現するにはポートを減らすのが効率が良く、結局企画は頓挫してまとまった性能のモバイルPCとして再企画して売り出した。

 これから得られる教訓は、なんてものは書かないが、しかしそれが今や主力商品になっているのだから、何が起こるか分かったものではない。

 得てして、様々な物事や事象は繋がっているのだから。

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