第17話:終焉後の世界と、影の支配者の真意

1.システムの真実と、管理者の告白 🧠

リセットプロトコルを停止させ、管理者権限を無効化された校長先生は、コンソールの前で項垂れていた。

「…無駄な抵抗だったな、佐倉君。世界の欠陥は、修正できない。君たちが私を止めても、バグは世界に満ちている」

咲耶は、冷静に校長に詰め寄る。「校長先生。あなたこそ、この世界の**『根源的なエラー』**の正体なのですか?」

校長は、静かに首を横に振った。

「違う。私は、このシステムを維持しようとした**『修正者』の失敗作だ。そして、佐倉君、君たちが戦っている『根源的なエラー』**の正体は…」

校長は、背後のコンソールを指さした。

「この世界の**『設計思想』そのものだ。この世界は、『常にバグ(欠陥)を内包し、そのバグを乗り越えることで、真の進化を促す』という、極めて不安定なプロトコルで動いている。その不安定さこそが、『人間性』**のバグだ」

ひかりが混乱した表情で尋ねる。「じゃあ、私たちがバグを修正しても、また新しいバグが生まれるってこと?」

「その通りだ。バグを完全に修正することは、この世界の**『存在意義』**を否定することになる」

2.『影の支配者』の真の目的 🌑

その時、地下サーバー室の隅の空間が、わずかに歪んだ。

「その通り。システムの**『欠陥』は、修正ではなく、『初期化』**が必要だ」

現れたのは、あの黒いローブの使者だった。彼は、砕けた増幅器の残骸を無視し、冷徹な視線を校長と俺たちに向けた。

「お前は…!なぜここに!?」咲耶が警戒する。

「校長先生が停止させたリセットプロトコルは、あくまで**『管理者権限による初期化』。我々『影の支配者』が求めているのは、『システムの設計思想』そのものに干渉する『絶対的なリセット』**だ」

使者は、校長がいたコンソールに歩み寄る。

「校長先生、あなたは、システムの不安定さに耐えきれず、**『安易なリセット』**を選ぼうとした。しかし、我々は違う」

使者は、初めてフードを少しだけ下げた。その顔は、驚くほど幼い少年のものだった。

「我々『影の支配者』の真の目的は、**『デバッガー』である君の能力を利用し、世界の根幹にある『バグを生み出す不安定なプロトコル』を特定し、それを『恒久的に修正』**することだ」

「恒久的に修正…?」俺が訊き返す。

「そうだ。世界の設計思想を書き換える。そうすれば、**『完璧な、バグのない世界』が誕生する。それが、我々の『終焉』**の、その先の理想だ」

零が、冷静に分析する。「つまり、私たちは**『局所的な修正』、あなたたちは『根本的な修正(書き換え)』**を目指している。目的は同じ、ということ?」

「手段が違うだけだ。そして、そのためには、君の**『真実のログ』**を読み取る能力が必要だ、デバッガー・悠斗」

使者は、悠斗に手を差し伸べた。

「我々と手を組め。共に世界の根源的なエラーを修正し、この**『欠陥品の世界』を、真の『完全な世界』**へと進化させるのだ」

3.デバッガーの選択と、新たなバグの予兆 💥

「…断る」

俺は、迷うことなく使者の手を叩き落とした。

「俺は、**『バグのない世界』なんて望まない。咲耶や、ひかり、凛、零…お前たちとの、この『バグだらけの非日常』こそが、俺の『真実の日常』**だ!」

「修正者(フィクサー)は、世界を壊そうとする者から、世界を守る!それが、俺たち『放課後チート同盟』の使命だ!」

俺の決意の言葉に、美少女たちは、強く頷いた。

使者は、少年の顔のまま、悲しげに微笑んだ。

「…残念だ。デバッガー。君もまた、この不安定な世界に**『執着』**する、愚かなバグの一つに過ぎない」

使者は、再びフードを被り、空間に溶け込むように消えた。

「奴は、必ずまた来るわ。今度は、**『根本的なエラーの修正』**という、より大きなバグを仕掛けてくる」咲耶が、強い警戒心を示す。

その瞬間、地下サーバー室の隅に、微細な空間の歪みが発生した。

俺のデバッガーウィンドウが、かつてない警告を放つ。

【CRITICAL ALERT: Root Bug Access Detected - World Core Exposure!】

【エラー種別:Temporal Paradox Loop - 過去の自己との接触】

「なんだ!?またバグか!?」ひかりが構える。

歪みの中から現れたのは、俺と同じ制服を着た、もう一人の佐倉悠斗だった。

しかし、その佐倉悠斗は、俺よりもさらに陰気で、怯えたような表情をしていた。彼の制服には、見慣れない校章がついている。

「…逃げろ!この世界は、もうすぐ『システム』に食い尽くされる!」

もう一人の俺は、そう叫んだ瞬間、元の歪みの中に引きずり込まれ、消えていった。

「もう一人の俺…?そして、**『システムに食い尽くされる』**だと!?」

俺たち『放課後チート同盟』は、世界の終焉を阻止した直後、**『別の世界の自分自身』**という、予測不能なバグと、対峙することになったのだった。

—―第17話 完—―

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