第10話:「天才」の皮を被ってと、美少女たちの護衛

1.「天才」の陰キャ、佐倉悠斗

成績改ざんバグのせいで、俺、佐倉悠斗の学園生活は一変した。学年トップという**『偽りの地位』**を与えられた結果、これまで空気だった俺に、全生徒の視線が集中している。

教室では、俺の席の周りに質問攻めの生徒たちが群がり、休み時間も気が休まらない。

「佐倉くん!あの超難問、どうやって解いたの!?」

「次の数学の小テスト、佐倉くんに教えてもらいたいな!」

「いや、俺は別に…」と口ごもる俺の代わりに、華麗に質問を遮ったのは、咲耶だった。

「ごめんなさい。悠斗は今、次の論文の構想を練っているところよ。凡庸な質問で、彼の集中力を乱さないで」

咲耶は、優雅な笑みを浮かべながらも、その言葉には冷たい威圧感が込められている。彼女は、完璧な美貌と学力、そして生徒会長という地位を利用して、俺を**『天才』**という殻の中に閉じ込めて守っているのだ。

廊下を歩くときもそうだ。

**左隣には、**モデル顔負けのスタイルを持つ咲耶。生徒会長として、俺の横を歩くのは「当然」の体で、誰も近寄らせないオーラを放つ。

**右隣には、**エネルギッシュな体育会系美少女、ひかり。彼女は常に半歩前に出て、「道を空けて!悠斗は急いでるんだ!」と、俺を物理的にガードしている。

**背後には、常にポッキーを咥えた零。時折、周囲の生徒に『幻惑』**を仕掛け、「佐倉悠斗が話しているのは、実は平凡な天気の話だ」と、会話内容を無意識に改ざんし、俺を守っていた。

そして、**一歩離れた場所から、**ノートPCを片手に、凛が周囲の電波と人の動きをチェックしている。

まるで、**『伝説の天才ハッカーが、四人の美少女ボディガードに守られながら登校する』**という、アニメの設定のような状況だ。俺は、あまりの気恥ずかしさに、顔を上げることすらできない。

「佐倉君。周囲のデータを見る限り、あなたの『天才』という設定は、完全に生徒たちに受け入れられたわね」

凛がインカム越しに報告する。

「良かったね、ゆうくん!これで、誰もゆうくんが陰キャだったなんて、思い出さないよ!」

ひかりは無邪気に言うが、俺の心境は複雑だ。

(…俺が『天才』だって?いや、俺の能力は『デバッガー』。ただのシステムの**『裏コード読み』**だ。この偽りの日常が、いつか崩壊するんじゃないか…?)

<h4>2.部室での安らぎと、咲耶の本音</h4>

放課後。チート同盟の部室で、ようやく俺は一息つけた。

部員たちがそれぞれ休憩している中、咲耶が、冷たい紅茶を俺に差し出した。

「お疲れ様、悠斗」

「あ、ありがとう、咲耶」

二人きりになり、俺は正直な気持ちを口にした。

「なあ、咲耶。この**『天才 佐倉悠斗』**の芝居、いつまで続けるんだ?」

咲耶は、俺の質問に答えず、静かに部室の窓の外を見つめた。

「…『影の支配者』は、あなたの能力が、私たち修正者チームの**『核』**であることを見抜いた。あなたを目立たせることで、チームの活動を制限し、外部からの攻撃を容易にしようとしている」

「それは分かっているけど…」

咲耶は、くるりと俺の方を向き直った。その瞳には、強い決意と、わずかな弱さが同居していた。

「悠斗。私たちの世界は、**『修正』がすべてではないわ。私たちにとって、あなたは単なる『ブレイン』ではなく、この『バグだらけの世界の、唯一の希望』**よ」

彼女は、俺の手に触れそうになり、寸前で手を引っ込めた。

「だから、お願い。あなたが安全でいることが、私たちにとっての**『最優先プロトコル』なの。この偽りの日常が、一時的にでも、あなたを守る『盾』**になるなら…私は喜んで『天才』のガード役を演じるわ」

咲耶からの、初めての感情的な告白だった。俺は、彼女の真剣な眼差しに、ただ頷くことしかできなかった。

<h4>3.異世界の招待状</h4>

その瞬間、部室内に誰もいないはずなのに、紙が擦れる音が響いた。

俺たちが顔を上げると、部室のテーブルの上に、見慣れない黒い封筒が置かれていた。

「いつの間に…!?」ひかりが驚愕する。

零が、封筒に手を伸ばそうとするが、凛が鋭く止めた。

「待って、零!触らないで!電波も、空間の歪みも検知できない…これは、**物理的に『世界をすり抜けて』**置かれたものよ!」

俺の視界には、またしても警告ウィンドウが表示されていた。

【CRITICAL ALERT: New Protocol Detected - Source: Shadow Dominator】

【メッセージ種別:非改ざん型・絶対的命令(アブソルート・コマンド)】

俺は、意を決して封筒を手に取った。薄いが、ずっしりとした重みがある。

封筒の裏には、禍々しい紋章と、**『From: Shadow Dominator』**という印字。

中に入っていたのは、一枚のシンプルなカードだった。

そこには、ただ一文だけ、書かれていた。

> 「デバッガー・悠斗。我々の世界へ、ようこそ。――終焉(おわり)のバグ、『校庭の時計』にて待つ」

>

そして、カードの裏側には、意味不明な**『座標』と、『1時間後』**というタイムリミットが刻まれていた。

「…終焉のバグ?」俺はカードを握りしめた。

「このメッセージは…私たちへの挑戦状よ」咲耶の瞳が、静かに炎を宿す。

「どうする、悠斗?これは、彼らの領域への**『招待状』**よ」

俺は、陰キャな俺を**『天才』**という名の檻に閉じ込め、仲間たちを危険に晒した相手に対する、怒りを感じていた。

「行くぞ。俺が**『デバッガー』だ。相手の領域に踏み込んで、『終焉のバグ』**とやらを、根本からデバッグしてやる!」

美少女たちは、俺の力強い決断に、静かに頷いた。

—―第10話 完—―

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る