​第4話:影の支配者と、四人目の美少女

1.部室での報告会と、悠斗の立ち位置

​重力バグの修正を終えた俺たち三人は、再び旧放送室の部室に戻ってきた。

​テーブルの上には、凛が持ち込んだ高性能なPCが並び、先ほどのバグ修正のデータがグラフ化されている。

​「…今回のバグ修正率は98.7%。成功と見ていいわ」凛は白衣の袖をまくり上げながら、淡々と報告する。

​「佐倉君の『バグの検知』と『波長解析』のスピードが、私たちの予想を遥かに上回っていた。やはり、あなたの存在は不可欠よ」

​「いや、俺はただ、画面に表示された情報を読んだだけですよ…」俺が恐縮すると、ひかりが明るく肩を叩いてきた。

​「そんなことないよ、ゆうくん!ゆうくんの情報がなかったら、あたしたちはあの重力に潰されてたんだから!ゆうくんは、あたしたちの**『司令塔』**だ!」

​ひかりのストレートな称賛に、顔が熱くなる。こんな美少女に褒められるなんて、今までの人生ではありえなかった。

​咲耶は、いつもの厳しい表情のまま、俺を見据えた。

​「佐倉。あなたは、私たちが『修正者』として活動するための**『キー』**よ。あなたの能力こそが、この世界を救う第一歩になる。…ただし、あなたの身に危険が及ぶことは極力避ける。これはチームのルールよ」

​「分かってる。…でも、どうして俺は、こんな『不具合』が見えるようになったんだろう?」

​俺の問いに、咲耶は静かに答えた。

​「まだ確たる情報は得られていない。ただ、過去の記録を照らし合わせると、世界が大きな**『変革期』を迎える前に、ごく稀に、『デバッガー』**と呼ばれる存在が現れた、という記述がある」

​変革期。世界の終焉か、それとも進化か。俺にはまだ、想像もつかない話だった。

​<h4>2.迫りくる『影の支配者』の影</h4>

​「一つ、重要な情報を共有する」凛が、大型モニターに、複数の企業のロゴを映し出した。

​「私たちは、ただ『世界のバグ』を修正しているだけではない。その**『バグを意図的に利用しようとする者たち』**も存在する」

​「…バグを利用?」

​「ええ。例えば、今回の重力バグ。もしあれが特定の場所に意図的に発生させられていたら?株価の操作、ライバルの排除、犯罪の隠蔽…何でもありだわ」

​咲耶が、静かに付け加える。

​「そして、その『バグの悪用』を組織的に行っていると思われるのが、**『シャドウ・オーバーロード(影の支配者)』と呼ばれる謎の集団よ。彼らは私たちと同じく、『異能者』**を擁している可能性が高い」

​「私たちの敵…!」ひかりの表情が、一気に真剣になる。

​「彼らは、バグの発生を誘発させ、自分たちの欲望を満たそうとする。私たちは、彼らの介入を防ぎながら、世界を正常化させなければならない」

​『影の支配者』。俺の冴えない日常の背後に、そんな巨大な陰謀団が存在していたなんて。

​「…そうか。じゃあ、俺が見た最初の『時間停止バグ』も、彼らが仕掛けたものだったのか?」

​咲耶は静かに首を横に振った。

​「あれは…まだ分析中よ。ただ、あの時の時間停止は、意図的なものというより、『世界システムが、あなた(デバッガー)を緊急起動させた』、という可能性もある」

​俺が、この世界にとって、何らかのシステム的な『鍵』のような存在…?

​<h4>3.幻惑の美少女と、最後のピース</h4>

​重い情報に、部室内の空気が沈んだ、その時だった。

​部屋の隅に、違和感が生じた。

​光の屈折が、一瞬だけ、異常なパターンを描いた。そして、何もない空間から、まるで霧が晴れるように、一人の少女が現れた。

​**カゲロウ(陽炎)**のように、実体のない、幻想的な美少女。

​ロングの黒髪に、どこか遠い目をした瞳。制服を着崩し、アンニュイな雰囲気を纏っている。

​彼女は、驚く俺たち三人を一瞥し、その場に備え付けてあった小さな菓子箱から、ポッキーを取り出して口に咥えた。

​「…遅いよ、お姫様たち。とっくに始まってるんでしょ、『放課後チート同盟』の会議?」

​咲耶は、彼女の登場にため息を漏らした。

​「遅刻よ、黒崎 零(くろさき れい)。あなたはいつもそうだ」

​「ごめんね、咲耶ちゃん。ちょっと校内で**『幻(イリュージョン)』**の実験をしていたの」

​黒崎 零。彼女こそが、四人目の『修正者』。そして、このチームの最後のピースだった。

​「私の能力は**『幻惑(イリュージョン)』。視覚、聴覚、触覚…五感を操って、敵の認知を書き換える。つまり、『影の支配者』から私たちを隠したり、敵を混乱させたりする『潜入・攪乱役』**ね」

​零は、俺に近づき、顔を覗き込む。その瞳の奥には、一瞬、虹色の光が揺らめいた。

​「あなたが、噂の『デバッガー』君?…ふふ、確かに、すごく**『見えない』**存在だね」

​「あ、あはは…どうも…」

​「佐倉君。これで、『放課後チート同盟』のメインチームが揃ったわ」凛が、テーブルを叩いた。

​デバッガー(頭脳)、フリーズ(戦術)、ブースト(攻撃)、キャンセラー(分析)、そしてイリュージョン(潜入)。

​冴えない陰キャの俺は、美少女だらけのチートチームの唯一の男子メンバーになってしまった。

​そして、俺たちの使命は、**「世界の不具合」を修正し、裏で暗躍する「影の支配者」**を打ち倒すこと。

​放課後の日常は、もう完全に、非日常へと変貌してしまったのだった。

​—―第4話 完—―

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