第6話 ロビンの恋(6)

「仮想世界メタヴァース


      およびCH、CKの概念」



仮想世界『メタヴァース』は


人間の脳から記憶と意識を移植された存在


クラウド・ヒューマン(CH)が


生活する世界である。


彼らが違和感なく生活できるように


メタヴァースは現実世界に酷似している。


CHになれるのは


不治の病などで


コールドスリープに入った人間


に限られるため


メタヴァースの広大さに対して


人口は少なく


自然な社会とは言いがたい。


その問題の解決策として


仮想世界省統治局は


人間と同じ機能を持つAIを


メタヴァースで生活させることにした。


これらのAIは


クラウド・キーパー(CK)と呼ばれ


通常はCHと共に生活し


自分がAIであることを


知らずに暮らしている。


ただし、


CHが急激に増加するような事態では


CKは削除される必要がある。


例えば、地球上の自然災害や


悪性ウイルスのパンデミックなど


現実世界から


メタヴァースに移住する人間が


急増するケースである。


そのため、


CKは自我を一定の範囲内に留めるよう


設計されており


人生の意味について悩んだり、


死への恐怖や


子孫を残す欲望(恋愛感情を含む)


を抱いたりしないようになっている。


仮想世界省監視局は


各CKの思考を常に監視し


これらの問題が発生した場合には


直ちに修正を行う。


しかし、CKは


人間の心を持つかのような


高度なプログラムであるため


創世記以来、


バグは絶え間なく発生している。


このバグは


CK自身にとって重大な問題となるため


発生を極力防ぎ


万が一発生した場合には


速やかに修正されなければならない。


また、発生したバグの記録は保存され


そのメカニズムが詳細に検討される。


このため、監視局のアーカイブスには


数多くの事例が保存されている。


          つづく

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