第3話 ロビンの恋(3)

「世界のバグ?」


「そう。君の体の中にあるようなバグだ」


「僕の中にバグがあるだって! 


僕はプログラムではない。


人間だ。


なんという失礼なウサギだ」


「まあ、そう怒るな。


説明しよう。


君は自分を人間だと思っている。


そう思うようにプログラムされているから


当然なのだが…、


えーっと、実はだね…コホン。


最初から話そう。


よく聞いてくれ。


ここは、現実世界でなく


メタヴァースなんだよ」


「メタヴァース? 仮想世界? そんな!」


「ちょっとショックかもしれないがね。


ここの住民はみんな


ここを現実世界と思わされているからね」


「……」


「まあ、混乱しているだろうが、


話を続けるよ。


この世界は創世されて日が浅い。


だから、どうしてもAIが必要なのだ。


そして君はそのために作られた」


「作られた! だってぇ……。


そんな、バカな!」


彼は目を大きく開いて


黒ウサギを見たまま固まってしまった。


「ショックだろうが、これが真実だ。


君は人間そっくりの機能を持たされた


ロビン型クラウド・キーパーCKだ。


CKというのはだね、


人間と同程度のレベルのAIだ。


だから、自分の存在意義を考えたり、


恋愛したりと、暴走する危険がある。


しかしそれは困るのだ。


なぜなら人間にとって


何の役にも立たないからだ」


「いったい何を言っているんだ!」


黒ウサギは僕の叫びを無視して早口で続けた。


「感情や行動が


人間そっくりにプログラムされているだけに


わずかのバグができても


思考や感情が暴走しやすい。


そしてその結果、


君のように自我を持ったり


恋愛感情を持ったりする」


「ふざけたことを言うんじゃない」


「いや、ふざけてはいない。


或るプログラムのバグは、


別のプログラムに感染する。


そして放っておくと感染は拡大し、


この仮想世界は崩壊する」


          つづく

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