第2話 ロビンの恋(2)
「ここはどこなんだ!?
あなたは誰で、
何のためにこんなことをしているんだ!?」
「驚かせて申し訳ない。
私は見ての通りのウサギだ。
君は
『不思議の国のアリス』
を読んだことがあるね。
そこには白ウサギがでてくるだろ。
私もあなたを不思議の国に導くために
こうしている」
「不思議の国? 何のために!」
「まあ、そんなに怒らなくてもいい。
これから、或るところに案内する」
黒ウサギは踵を返して
すたすたと歩き始めた。
僕はまだ痛む足腰をさすりながら
びっこを引いてあとを追いかけた。
黒ウサギは湖のほとりをしばらく歩き
左手に拡がる森の中に入っていった。
ケモノ道のような道が続いている。
顔に木の枝がかぶさるのを手で払いながら
足元の凹凸や穴に気を付けながら
必死にあとを追いかけた。
やがて目の前が開けた。
草原がどこまでも続いている。
驚いたことに
地下にいるはずなのに
見上げると
真っ青な空が広がっているではないか。
これは夢なのかと
目をこすりながら突っ立っていると
黒ウサギが振り向いて言った。
「左手を見てごらん。
ドームが見えるだろう」
黒ウサギが示した方角には
遥か彼方に巨大な半球があり
太陽にきらきらと輝いている。
「ああ、見えるよ。
遠くにあるけどずいぶん大きなドームだね。
東京ドームより大きいかもしれない」
「まあ、大きさはどうでもいい。
あそこが目的地だ」
そう言うと黒ウサギは
再びすたすたと歩き始めた。
仕方がないので僕も後を追った。
次第に巨大なドームが近づいてくる。
ドームは半透明だ。
あたりに人はいない。
ドームの前に来ると
半球に大きな割れ目ができた。
黒ウサギと僕は中に入った。
目の前には吹き抜けの空間が広がっている。
三十メートルぐらいの高さにある天井からは
豪華なシャンデリアが
いくつもぶら下がっている。
どこのホテルのエントランスよりも
ゴージャスなインテリアだ。
左手のエレベーターに乗り
二階に上がった。
目の前の広い廊下を歩く。
両側には大きな扉が並んでいる。
右にある三つ目の扉の前に来ると
ウィーンという音とともに
自動的に左右に開いた。
中に入る。
中は真っ暗で
会議室ほどの大きさの部屋の壁は
0と1の数字の列で埋め尽くされている。
数列は点滅しながら縦方向に流れている。
「まるで
マシンランゲージ(機械語)のようだ」
と呟くと黒ウサギはこっくりと頷いた。
「そのとおり。
このドーム全体に
マシンランゲージが流れている。
この世界のバグを取り除いているのだ」
つづく
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