爆誕!万能芋ポルミラ


いつもの朝だった。キッチンではフライパンの中でジューッとを音をたてて香ばしい香りを漂わざる。

セイラは微妙な火加減を調節しながら思わず顔がニヤけてしまう、

「驚いてくれるかな?」

「もちろん!こんな大発見だよ!」

セイラとレインは料理をテーブルへ並べ始めると、外から賑やかな声が聞こえてきた。


 レインは急いで扉を開け、野いちごを籠いっぱいにつんだランジェとアーダを迎えた。

「ただいま〜。両手が塞がってるのよく分かったね」とランジェが言う。

アーダは扉を見つめて⋯違うよランジェ、と思いながらレインに目配せする。

レインは分かってるというようにアーダへと頷きながら「ん、そんな気がしただけ。野いちごかぁ、美味しそうだね、ランジェ」


「おかえり、2人とも。」セイラの声に食卓に並んだ料理の数々にみんなの視線が向かう。

「うわぁ、朝から豪華だね!」

「お腹すいたでしょ。」セイラはハンバーグにソースをかけながら食卓へとみんなを促す。

ポテトサラダ、ビシソワーズ、フライドポテト、薄切りのポテトを揚げて砕いたソースがかかったハンバーグ⋯

「「「「いただきます」」」」

「今日はポテトずくしだね」スープを一口飲み、ランジェは笑顔でハンバーグを切り分け始めた。

セイラとレインは凝視しないように気をつけながら反応を待った。

アーダは平然と食べている。


⋯パクっ


ランジェがハンバーグを口に入れた。


⋯モグモグッ


「どう?」セイラが訊ねた。

「このソースに混ざるカリカリがいいね!新作?」

「何だかわかる?」レインも訊ねた。

「このカリカリはポテトを揚げたのかな?ハンバーグともよく合ってるよ」

「この前肉が足りないって言ってたよね?」アーダの疑問にドキリッとする2人。

「あ〜、他の食材混ざれるからハンバーグなんだね?美味しいよ」ランジェは食材を当てようとじっくり味わい始めた。

「オニオンと後は⋯なんだろう?お肉の味がしっかりするし」

「お肉の味する?」

「うん」

「あ〜それね、実はお肉使ってないんだ」とセイラ。

「え〜〜〜」ランジェはもう一度ハンバーグを口に入れ確かめる。

「豆類の感じもないし、こんなにジューシーな肉汁なのになんで〜?アーダ、わかる?」

「わからん。けど美味しいよ。この前収穫したポテト随分採れたよね?」

「「!!!」」セイラとレインは顔を見合わせた。

「アーダ気付いたみたいだね」

「えっなになに?ポテトはソースに使ってるやつ?」

「あのね、この前収穫したポテト、いつもと形も大きさも違ったんだ」

「でね、植えた時の事思い出したの」セイラとレインは説明を始めた。



話はポテトの植え付けの時期に戻る。

「レイン、ランジェ。灰の用意お願いね」セイラとアーダは土を耕しにセイラ農園へ向かった。

「よーし始めるよ!」

「容器はこれでいいよね?」丸い金盥は底に魔法陣が刻まれ劣化を抑える魔法がかけられている。

「保存性上げる魔法だから問題ないはずだよ」

「ね、レイン。怪しい肝とか干からびた心臓とか入れちゃダメだよ!」

「そんなの入れないよ〜」レインは手に持った赤黒い小瓶をそっと後ろに隠した。

サラサラとした灰を容器に入れるレイン。

⋯大樹様、豊穣に祈りを

大樹の草木灰を混ぜながら祈る。

「この辺のスパイスも整理しないといけないね」ランジェは棚に並んだスパイス類に手をかけた時

「あっ!ストップ!」

「えっ?」

スルッと小振りの壺が揺れ灰の中へ舞い落ちる。

「あちゃあ、コレ何のスパイス?」

「えっと、お肉を美味しく焼くハーブ系だったかな?」

「ならポテトとも合うし、大丈夫⋯だよね?」

「コレお野菜にも合うし美味しくなるよ!」 

「他にも合いそうなのある?」

「えっと、これとかどうかな?」

2人はポテトが美味しくなるように灰の中へ次々と混ぜていった。



⋯⋯⋯⋯⋯⋯



「思い出したよ」ランジェは複雑な顔だ。

「まさかお肉味のポテトになるなんてね」とレイン。

「違うよ。普通のポテトの味なのにみじん切りして焼くとお肉の味なの」とセイラ。

「それって結果オーライって事?」アーダはハンバーグをフォークに刺してまじまじと見ている。

「奇跡的にね。レインに灰の話を聞いて唖然としたよ」

「下手したら収穫全部ダメになるところだね」ハンバーグを口に運びながらアーダもセイラに同意する。

「アーダも知ってたの?」ランジェは自分だけポテトの秘密を知らなかったと思った。

「知らなかったよ。でも2人の今日の様子じゃなんかあるのはわかるよ」

「アーダ驚かないんだもん。つまんない」レインはちょっとむくれてみせた。

「驚いたよ。けどレイン達はソワソワしてるし、なんかあるなって思っただけ」

「とにかく肉不足は解消したんだし、美味しく頂きましょ!」セイラの言葉に食事を再開し今回のポテトの不思議をアレコレ語り尽くした。


 結果「セイラの作る野菜はみんな美味しい」という結論に落ち着いた。


 後日、ポルミラと名付けられたポテトはお肉にもなる万能芋として食卓に並ぶ機会の1番多い野菜となった。



 ちなみに、レインがこっそり入れたのは肝でも心臓でもなく牛の血を凝固させて砕いた粉だった。魔女の料理ではよく使うアイテムだが、レインは黙っておくことにした。



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