第2話 冒険者としての始まり
「ステータスオープン」
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名前:斗賀野仗助
性別:男
年齢:21
スキル:【異次元通販】(
【武神】(
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試してみたら、確かにスキルが追加されていた。それもレジェンドレアだ。俺の記憶が確かなら、これは最上級レア。ただし、それは現実世界での話。こっちの世界、すなわち異世界ではどうなのかわからない。
それでも、大いに期待できるのは確かだ。そういうわけで、俺は武神スキルってのを試すべく、まずその辺にある木を切ってみることにした。
素手とはいえ、説明では自分の体も武器になるとあったので手刀でもいけるはずだ。痛いのは嫌なので、俺は手刀で軽く木を切ってみる。
「え……?」
普通に切れ目がついてる。まるで斧で切ったみたいに。それならとばかり、思いっきり力を入れてみると、木は真っ二つになって落下した。
「おいおい、なんだこりゃ……」
というか、妙に体が軽いので軽くジャンプしてみると、1メートルは優に超えたので驚く。思いっきりジャンプしてみたら3メートルは跳んだのでその勢いでバック宙をしてやろうとしたら、勢い余って3回転してしまった。いやいや、これは凄いぞ。これなら異世界でも普通に生き抜いていけるかもしれない。
そういえば、異次元通販スキルって連続で使えるのかどうか試したところ、何も起きなかった。さすがにそれは無理か。1日経過する、あるいは日時が夜の12時を過ぎた時点で使用できるかは不明だが、後日また試してみるとしよう。
さて、これからどうするか。武神スキルを最大限に活かせるとしたら、やっぱり冒険者になるのが最善策だと思える。そういうわけで、俺は道行く人に冒険者ギルドの場所を尋ねることにした。
みんな武器を携帯してて怖そうだからためらうが、勇気を出して聞いてみる。
「あの、すみません、冒険者ギルドってどこですか?」
「……ん、坊主、ここに来たのは初めてか?」
「はい、そうです! この町についてもよく知らなくて……」
「ハハッ、まるで異世界から来たみたいだな」
「……えっと、遠方の片田舎から来たんです」
「なるほどな。ここはストラウス王国の王都グレスティアの神殿前だ。ここからなら、あの路地をずっと真っすぐ行って、大通りに出たら左のほうに行けば大きな建物が見えてくるだろうから、そこが冒険者ギルドだよ」
「ありがとうございます!」
俺は日銭を稼ぐために冒険者ギルドに行くことにした。やっぱ異世界転移といえばギルドで依頼を受けるのが定番だからな。
召喚してきたやつもそうだが、日本語が普通に通じるので助かった。現実世界から勇者となる人物を召喚をしているくらいだから、その勇者の影響を受けて日本語が共通言語になったなんてことも考えられる。
親切な通行人が教えてくれた通りに行くと、やがて前方から大きな建物が見えてきた。あれが冒険者ギルドか……。やはり迫力がある。
中へ入ると、屈強な体つきの男たちがジロジロと見てきたので緊張した。まさに蛇に睨まれたカエル状態だ。
とはいえ、俺にはレジェンドレアスキルの武神があるんだから自信を持てと自分に言い聞かせる。花で彩られたカウンターが中央にあって、赤毛ポニーテールの受付嬢らしき人に話しかけてみた。
「すみません。あの、冒険者になりたいんですけど」
「……あ、新人の方ですね。では、この書類にあなたのお名前等、記載してください」
「わかりました」
俺は必要事項を書き込んだ。といっても、スキル名を書くわけじゃないので安心した。個人証明のためのもので、名前や年齢、性別を書くだけで充分なんだとか。
「ジョースケ様、お待たせしました。これがギルドカードです」
「おお、ありがとう」
なお、情報を偽って書いても自動的に修正されるうえ、ギルド側に不信感を持たれるためやめたほうがいいという。受付嬢によると、ギルドカードはモンスターがドロップする魔石で作られているというから、これも一種の魔道具といえるのかもしれない。特定のモンスターを倒すたびにこれに記録されるらしいからな。
冒険者ランクは、新入りなのもあって当然まだ最下級のFなので、大した依頼は受けられない。それでも、中にはゴブリン討伐なんかの依頼もあって気分が高揚した。放置しておくと近隣の村人や家畜に被害が出るんだとか。ゴブリンがいるだなんて、本当に異世界に来たって感じがする。
「これを受けます」
「……あ、はい、ゴブリン10体討伐の依頼ですね。素材を持ち帰るのもお勧めしますよ」
「素材?」
「はい。ゴブリンの体を持ち帰ることで、素材として売ることができますから」
「なるほど、副収入になるわけか」
「ふふ、そうなりますね。ただ、丸ごと持ち帰るのは大変ですので、耳や牙等、一部を切り取ることをお勧めします」
「ああ、そうさせてもらうよ。アドバイスありがとう」
「いえいえ、頑張ってくださいね、ジョースケ様!」
そのあと、俺は素材の一部を持ち帰るための小さな皮袋も貰った。ゴブリンの肉片をポケットに入れるのは嫌だし、これなら安心して持ち帰ることができそうだ。
狩場がどこにあるのかも受付嬢から教えてもらったので、俺は早速ゴブリンが棲むという森へ向かう。そこまで結構な距離があったが、武神スキルのおかげで身体能力も上昇しており、すぐに到着することができた。
「ギギ……」
耳障りなゴブリンの鳴き声が聞こえてきた。奥から鋭い耳と目つきをした、緑色のモンスターが姿を現す。人間の子供くらいのサイズで、手には短剣やら棍棒やら、弓やらを持っている個体もいた。
ゴブリンたちは次から次へと姿を現し、ざっと数えてみても10体は優に超えていた。なんかやたらと多い気がするが、これだけいるなら武神スキルを試すのにちょうどいい。一気に討伐依頼を終わらせてやる。
「ギ……!?」
目の前に驚愕の顔を浮かべるゴブリンがいた。やつは文字通り宙に浮いており、俺が距離を詰めて首を刎ねた直後だった。気合を入れて走ったらほぼ一瞬で距離を詰めることができたので手刀で仕留めたんだ。
鮮血で手が汚れるのが気になる程度だった。俺は背中に目でもついてるのかと思えるくらい、ゴブリンたちの攻撃を軽々と回避してはそのたびに仕留めることができていた。
顔面を思い切り殴っただけで木っ端微塵にすることもできるし、胴体だって手刀で真っ二つにできる。血や内臓が飛び散るのが気持ち悪いが、それ以上にサクサク倒せるので気分がいい。
お、茂みに潜んだ複数のゴブリンが弓矢を放ってきた。俺は咄嗟に回避しつつ、両手で石を拾って投げたところ、ゴブリン全員に命中して顔面に風穴をあけた。
「「「「「ガッ……?」」」」」
「……ふう。武神スキルって命中率も格段に上がるんだな……って、もう終わりなのか」
いつの間にか殲滅していたみたいだ。ゴブリンの死骸の耳やら牙やら切り取って袋に入れたんだがかなりの量があった。それでわかったんだが、俺が倒したゴブリン、10体どころか30体だった。
まさかそんなに倒していたとは知らなかった。それだけゴブリンが潜伏していたっぽい。あと、戦いに夢中でアドレナリンがドバドバ出ていたんだろう。さて、そろそろギルドへ帰るか。
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