第5話
通訳の仕事を紹介された俺は、馬車に乗って仕事先に向かっていた。
到着し馬車から出ると、そこはかなり豪華な宮殿だった。
まさか外交か?いやまさかな、流石にギルドで外交の通訳は募集してないだろ。
守衛が異常に重いドアを開け、俺は宮殿の中へと入った。
事前に指定された場所へ進む、どうやら説明があるらしい、いや事前に説明しとけよ。
部屋に入ると、平凡そうな感じの男が立っていた。
『あなたがギルドから来た派遣さんね、じゃあ今日の仕事について説明するんで。』
派遣の人を派遣さんって呼ぶのって異世界でも同じなんだ。
『今回やってもらう仕事はバヌス王国とセルヌニア帝国の外交の通訳になります。』
あ、まじで通訳なんだ。
しかも名前的にまぁまぁデカそうな国同士の外交だ。
『あ、あと注意してほしいことが一つあって。』
『この両国はかなり最近かなり外交状態が危機的で、一つの失言が戦争につながる恐れがあるので気をつけて通訳してください。』
え?まじで言ってるそれ?
そんな重要な仕事やらせるならせめて英検1級持ちにやらせろよ、3級じゃ荷が重すぎるって。
『もう直ぐ仕事だから、わからないところあっても質問しないで、俺もわからないから。』
『終わったらここに来て、報酬を払うから。』
『はい...』
てな訳で通訳が始まった。
簡単な翻訳って聞いたんだけどなぁ。
帝国の大使が口を開いた
『Your side focus on dialogue, not war!』(貴国は対話に集中すべきだ、戦争ではなく!)
声低っく!
待てなんて言った?落ち着け、俺は英検3級を持っている、だからこの程度の英語も訳せるはずだ。
王国側の人は日本語しか話せないし、俺がミスったら多分まずい。
でもなんかdieとはfuckとか言ってる感じするしこれ大丈夫か?めちゃくちゃ翻訳ミスりそうだけど、ええい!男は度胸だ〜!
『彼らはなんと言ってのだ?』
『えー、"あなたは死ね、くそったれ、地獄へ行け"と言ってました。』
そう伝えた瞬間、王国の大使はブチギレて部屋から出ていった。
それを見て帝国の大使は困惑を隠せていなかった。
俺は気まずかったので部屋から出て、男から報酬の1000ゴールドを手に入れ、馬車に乗ってハマーさんの家に帰った。
数時間後、ハマーさんに別れを告げて別のところへ旅に出ようとした時、掲示板にあるニュースが貼られていた。
"バヌス王国、セルヌニア帝国へ宣戦布告、外交での挑発行動を受けて"
あ、多分俺のせいだ。
多分翻訳ミスってたわ、まじか、俺のせいで尊い命と自然が壊れるなんて。
俺はショックを受け、死んだ。
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