第5話 猟師の実力
「遅いよ。まだ獣の方がマシだ」
僕は取ったガイラの手元を強く握り、彼の伸ばされた手に体を沿わせ反転する。そして僕の肘を、斧を振り上げたばかりに隙間の空いてしまったガイラの傍へと突き立てた。
「せっかくの甲冑も無駄になったね。身を守るためにあるんだから、隙間を作っちゃダメだ」
言葉にならないうめき声と共に、ガイラの体はくの字に曲がり、斧を落として雑草の中に消えていった。
「よくも俺の仲間を!」
アーデルハイトは、剣の切っ先を僕に向けたまま突進する。僕は切っ先が眼前に到達する直前に、しゃがみ、アーデルハイトの足を払う。宙に体を浮かせた彼の胴を、僕は頭上へと跳びながら肩で打つ。
「少なくとも僕は素早いと、さっき見てわかっただろうに。どんな小さな獣だろうと慢心すると痛い目を見る」
僕はアーデルハイトを肩で担いで、地面に叩きつける。うめくアーデルハイトを置いて、僕は飛び退き少女の元に戻る。少女を見ると、口をあんぐりと開いたまま硬直していた。
「お主。なぜ戦える? 勇者になれなかったのだろう?」
「書類審査で落とされた。普段は魔獣と戦っているから、体力はあると言ったのに、聞いてくれなかったんだ」
ムフゥ、と少女は鼻で息を吐く。片方の眉を上げ、奇妙な表情をつくった。
「人の質など書類ではわからぬからな。しかし、次はどうする? どうするのだ?」
少女は両手を胸に当て、目を輝かせながら言った。楽しんでいるのだろうかと、僕もまた笑みを含む。
「よくもふたりを! 絶対に許さないんだから!」
リイナが杖の先端を僕へと向ける。火球がゆっくりと膨らんでいく。ムフゥと少女が再び息を吐いた。
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