第1話 日常に混じる影
第1話
「────知ってる天井だ。」
開口一番、そんな台詞が出てくる。
此処は間違いなく俺の部屋だ………
足………有るな、ヨシッ!
痛みとかも無い………
「リアルな夢だったな………」
足をもがれ、死にかける夢なんて酷い悪夢だ。
精神的にかなり辛いが、そんな言い訳が学校に通る訳も無い。
今はえっと………
「6時半、か………近場の高校で良かったよ。」
早く朝ご飯作って、時間までのんびりするか………
「───ん?何か食材が少なくないか?」
冷蔵庫の中身が少ない気がする。
昨日の記憶が曖昧なせいで明確にそうだとは言えないが、沢山食ったにしてもこんなに減らない筈なんだが………
「う〜ん、まぁ良いか。後で考えよう。」
今そんな事を考えても精神的に疲れるだけだろうしな………
「ごちそうさまでした!」
さて、食後のグ◯コのカフェオレでも飲もうかな………
【ピンポーン♪】
それを邪魔するかの様にインターホンが鳴る。
………アイツ等か。
まだ時間有るだろうに………
「おはよう、ハブク!カフェオレちょうだい♪」
「おはよう、ハブク。俺にもそれくれ。」
「お前等、勝手に入ってくるなよ………今日は温めるか?」
「「クールのままで!」」
「了解。はぁ………」
俺が渡した(色々有って渡すしか無かった)合鍵で勝手に入ってきたコイツ等は俺の幼馴染、
いつも待ち合わせ時間より早く俺の家に入り浸り、俺のカフェオレを掻っ攫っていく。
お陰で消費が早い早い………
「ぷはぁ、やっぱり美味い!ハブクが入れてくれたからかな?」
「いや、そんなんで美味くなる訳無いだろ。」
「でも、美味いぞ。あの丸くて小さいのよりはな。」
「アレはそもそも四角い奴とは味が違うだろうが。」
コイツ等が集まると疲れる、主に俺がツッコミ役に徹しなければいけないから。
「お前等、何で俺と一緒に登校したがるんだ?二人とも付き合ってるんだから、カップルのイチャラブ登校でもしてろよ。」
「えぇ、私は幼馴染と一緒に登校したいの!」
「そうだぜ!そもそもそういうのは下校中にやってるし、無問題だ!!」
「そうか………」
俺が悪いんだが、聞きたくなかった………
俺は今も────
─────バカだな、俺は。
「飲んだらもう行こうぜ。そうじゃないと無限にダラダラしそうだからな、お前等。」
「確かに♪じゃあ、レッツゴー!」
「おう!そうだ、ついでに誰が一番早く学校に着けるか勝負するか?」
「「それは絶対しない。」」
「全否定!?」
いや、当たり前だろ脳筋バカ。
朝っぱらから疲れるのはごめんだ。
「────うん?」
未だに文句を垂れる脳筋バカとそれを宥める恋姫を放置して外に出た瞬間、目の前で影が動いた。
影が動いた気がした………
いや、そんな筈は…………
「入り口で呆けてどうしたの?」
「何か有ったか?」
「い、いや、何でもない。」
二人に話しかけられて我に返る。
影が動くなんて有る訳無いだろ、バカか俺は!?
実際、動いたと思った所を見返すと何の変哲もない光景だった。
────うん、やっぱり気の所為だ。
変な悪夢のせいで過敏にでもなっちまったか?
「………よし、早く行こうか。最後に出る奴はちゃんと鍵閉めろよ。」
消えない違和感を無視し、俺達は学校へと歩いていく。
後に思えばこの時に気が付いていれば幾らか楽になったのだろうが、後の祭りでしかないのでくだらない感傷でしかなかった。
続く
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