不死身TS少女に選ばれた凡人の現代奇譚
クロスディアⅡ
第0話 プロローグ
第0話
────世界を夜が支配する。
どれだけ人間が光を作ろうと消す事の出来なかった闇が空を覆い尽くしていく。
そんな当たり前の事を今まで俺は忘れていた。
────その罰なのだろうか?
『ほぉ、泣かないのか。流石だと褒めるべきか、面白くないと貶すべきなのか判断に迷うぞ、若人よ………』
そんな風に俺を責める様に影が語りかけてくる。
────ああ、俺も涙が出てこない事に驚きだよ。
今の俺はお前に足をもがれて無様に転がされてるのにな………
痛い、目茶苦茶に痛いよ………
普通なら痛くて痛くて今にも喚きたいくらいなのにさ………
『諦観、か………つまらんな。』
悪いな、つまらなくて………
昔から普通普通と言われてきた俺に人を笑わせる才能なんて無いさ。
ちょっとだけ芸人に憧れかけた時もあったけど、二人居る幼馴染の内の一人を見て諦めたからな。
「だ……れ………か…………」
『助けか?助けを呼ぶか?それは良い考えだと思うぜ?』
「──────────────────」
────いや、駄目だ。
助けを呼ぶ事など出来ない。
この場に人を呼んで俺の様な目に合わせてしまう。
コイツのこの喜びようからするに、それが目的みたいだし………
せめてもの、反抗だ………
────俺は此処で惨めで孤独に殺されてやるさ。
『つまらん、本当につまらん。やはり、お前等は何処までも私を不愉快にさせる生き物なのだな。』
そうか、不愉快か。
それならザマァみろってか────
「ご、め───」
意識が───続かな─────い
もう、俺は死────
「────大丈夫か、少年?」
────声が聞こえた。
本来ならこんな状況で聞こえる筈の無い声が。
鈴の音の様な声が響き渡り、俺の心を魅了していくのを感じる。
神様………なのかな…………?
ふふ、死ぬ前にそんな存在に会えるとは儲け物だな。
大事なあの世への土産にしないと………
「死にかけ────お前がやったのか?」
『────き、貴様は何者だ!?』
「────目の前に傷付いた人が居るなら助けろ、傷付ける奴から守れ。今がその時って事か。」
『早く私の問いに答えッ────!!!???』
霞んだ目の中に、影が光に吹き飛ばされる姿が映った。
ああ、綺麗だな────
「少し待ってろ、少年。今助ける。」
────助ける、か。
終ぞ俺が出来なかった事だ………
この人はそれが出来て羨ましいなぁ………
「無理か────なら、仕方ない。」
完全に意識が遠退く前、温かい何かが俺の唇に重なった様な気がした。
そして、それが俺の身体に────
続く
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