RAKUSEN
ヒロの物語
結成の章
第1話【暇な時こそ入学式】
俺の名は山口A太郎(15)そう、俺の親はまさかの名前にアルファベッドを入れてきやがった。『その名前にするのに市役所でかなり揉めたんだぞ』と歴戦の勇者の如く胸を張って言い放った父の脳細胞があるのか否か、その時からずっと疑問に思って来た。
さて、今日は第一志望だった高校の入学式に参加している。みんな(仲良くなれるかな?)とか、これからの学園生活に対する期待と不安でドキドキなんだろうが、俺は入試に失敗して落ちてる点がみんなとは大きく違う。(いつバレるんだろ……)という奇行の不正にドキドキしている。
体育館にズラリと並んだ椅子に着席した時点で、隅にいた生徒の席が無いとかで少し揉めていた。ふっ、この世は椅子取りゲームの様なもの、先に座った者の勝ちなのだ。ああ、言うまでも無いが、制服は丁度良いサイズの制服を着ていた生徒との、ストリートファイトにより手に入れた物だ。落ちた高校の制服をわざわざ買うバカは居ない。
校長の長話を聞き流すのは、脳死した連中の専売特許と言えよう、俺はそんな不毛な事はしない、何せ″いつ退室させられるか″分かったものではないのだからな。隣の男子生徒が俺に『君、名前は?』と聞いて来たので『A』とだけ答えた。嘘は付いていない、だがその生徒は疑惑の目で俺を見て沈黙した。それがお前と俺との差だ、とでも言っておこう。
転機は入学式の終わりにやって来た。
『これから名前を呼び上げる生徒から俺のとこ来てくれ』
『相野俊平』
『はい』
遂にこの時が来た。
まるでライヤーゲームさながらの緊張感が俺だけに走る。
『渡辺け…』『はい!』
それは思い切った判断だった。先生が名前を呼び終える前の返答一閃。
俺は聞き覚えのない名前に返事をした。ここに一切の迷いはない、なんなら最初から血迷っている。俺の隣で戸惑っている男子生徒が、おそらく渡辺なんたらなのだろう、残念だったな、お前はココまでだ。
そんなこんなで、俺は無事に入学を済ませた。
これをパラサイトと言わずして何と言おう。
さぁ、ゲーム開始だ。
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