第8話:古文書が示す場所と、満月の夜

 コヨミは古文書に残された紋様と、黒いあやかしの「清浄な塩の匂い」から、依頼主の居場所を特定した。


「この紋様を祀っているのは、廃れた漁港の近くにある、**『潮見祠(しおみほこら)』**だ」


「潮見祠……そんな神社、聞いたことないわ」


「神社ではない。あやかしと契約した人間たちが、人知れず祀りを行うための場所だ」


 古文書には、その祠が「満月の夜」に最も強力な力を持ち、そこで儀式が行われると記されていた。


 ハルカはカレンダーを見た。今日が、ちょうど満月の夜だ。


「今日中にサクラを動かさないと! サクラはまだ病院よ!」


「落ち着け、ハルカ。奴らは満月が昇り切るまでは動かん。今から準備をしても間に合う」


 コヨミは社の奥から、古びた**「破魔の矢」と、神社の結界を一時的に強めるための「お札」**を取り出した。


「私は結界を固め、奴らが神社に近づけないようにする。お前は、この破魔の矢を持って潮見祠へ向かえ」


「わたくしが一人で!?」


「嫌なら、私もついて行ってもいい。ただし、私の力が祠の穢れに触れると、結界が崩壊する危険もある。……どちらを選ぶ」


 コヨミは厳しい顔で、ハルカに決断を迫った。ハルカは決意の目を向けた。


「わたくしが行きます。サクラは、わたくしの幼馴染ですから」

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