第7話 初めてのデート♡
>愛ちゃん、来週の土曜日デート行かない?
あの日、美月からそんな甘酸っぱいLIMEが送られてきたのを思い出す。
ああ──私、まだあの頃の美月を探しているんだ。
こんなことになっても懲りずに。
あの時の光景がフラッシュバックする──
****
美月と出会って1ヶ月半が過ぎ、私と美月は親友と呼べるほどに仲良くなっていた。
学校に行く時も帰る時も、休み時間もずっと一緒。最初は美月との距離感に慣れなかったけれど、それは共に時間を過ごすことで少しずつ薄れていった。
まだ美月にドキドキしちゃうこともあるけど、最近はちょっとだけ美月と触れたりできるようになったんだから!
これは人類にとっては小さな一歩だけど、私にとっては大きな一歩だ!
なんて思っていると、机に置いてたスマホがピロン♪と鳴る。
そこには、ほぼ同じタイミングで2件の通知が届いていた。
一個目はりせちゃんからのLIME。
りせちゃんは私の小学校の頃の友達だけど、中学校からは私立になり、離れ離れになってしまった。彼女の勉強が忙しいこともあって、中学校になってからはほとんど会えなかったんだけど、久しぶりに会いたいそうだ。
これは予期してなかった嬉しい知らせだ。
だが返信する前に、一応もう一件の通知も確認しておく。もし美月からのLIMEだったら、早く返信しないと機嫌損ねちゃうかもだし…
画面をスクロールすると、通知は予想通り美月からのものだった。
美月のアイコンをタップすると、メッセージが現れる。
>愛ちゃん、来週の土曜日デート行かない?
「デッ…っ!?」
予想外の内容に、思わず変な声が出てしまう。
いや確かに、2人でお出かけしてもいいくらいには一緒に過ごしてきたし?
そろそろお出かけデビューしてもいいかなーとは思ってたけども…!
二人っきりでいきなりデート!?
いや、流石にそれは緊張する。
学校ではもはや公認カップルみたいに扱われている私たちだけど、外になると話は変わってくる。
だって私みたいな一般ピーポーがモデルの美月と並んだらどう考えても浮く!!
「あの子かわいー」
「え、けど隣で歩いている子イモくね…?」
「まあ…そうだけど」
とか言われた日には、私のメンタルは崩壊してしまう!!
けど、せっかく仲良くなってきたのにここで誘いを断るのは失礼だ。
実際、私も美月とデートは行きたい。
絶対緊張するけど本当に行きたい。
どうしたらよいものか…なんて考えていると再び美月から通知が届いた。
>沈黙は肯定と見なす
なんかすごい脅迫じみてない?
思わず背筋がゾクッとする。
>いや行きたいけど!
>行きたいけど?なんだい?
>まだちょっと迷ってて
>私よりも優先する用事があるの?
>そうじゃないけど!てかさっきから文面が怖いって!
>さすがに冗談だよ笑
>それで、行けそう?
少しの間、私はスマホとにらめっこしていたが、
>OK!
結局美月に押されてそのままOKスタンプを送信してしまった。
するとすぐさま返信が返ってくる。
>やった!
>じゃあ土曜日、楽しみにしてるから!
というわけで、2人でのお出かけが決定してしまった。
初めてのデート…!
いやマジで何着ればいいの!?
隣に立つのモデルさんなのに、それと比較されるの酷だって!
そんな私の嘆きを他所に時間は流れ、気づけばデート当日になってしまった。
11時過ぎの駅前。
土曜日なのも相まって、駅周辺はわいわいとにぎわっている。
結局、当日は美月の出てるファッション誌を参考にしたコーデにしてきた。
白いブラウスに、灰色のロングスカートというシンプルな服装。
けれど自分にできる最大限のお洒落服だと思うから、今日は立ち振る舞いだけでも堂々とする!それが美月の隣で立つための条件だ。そう自分に言い聞かせる。
「愛ちゃん!」
後ろから声が聞こえた。
振り向くと、そこには小悪魔的な少女がいた。
今日の彼女は黒いオフショールと白いジーパンというコーデだ。私同様、シンプルなファッションだが、美月という素材が良すぎるため、色っぽさが凄まじいことになっていた。言葉を選ばずに言えば、エロい。
メイクも大人っぽいため、本当に中学生離れしてる。
「ごめん、待った?」
「全然!私も今来たばっかだし」
けれども、口を開けばいつもの美月だ。
当たり前のはずだけど、その声を聞くとなんだかほっとする。
「愛ちゃん、じゃあ行こっか」
「うん!」
そのまま私たちは駅に入り、改札を通り抜けた。
そして電車に揺られること20分。
着いたのは、ここの近隣では一番大きいショッピングモールだ。
早速、美月の提案でタピオカ屋に行くことになった。
店内に入ると、そこは白を基調とした大人っぽい雰囲気の場所だった。
綺麗な子たちがたくさんいて、思わず身構えそうになる。
「もう、愛ちゃん緊張してガチガチになりすぎだって!」
「いや、私一人じゃこんなところ来ないから…」
美月がそう言うと、私たちはレジへと向かった。
相場とか知らないけどタピオカって何円くらいするんだろ…?
「いらっしゃいませー、ご注文は」
私たちはレジのメニューをじっと見つめる。
そこにはお洒落なカタカナのメニューがいっぱい載っていた。
何を頼めばいいのか分からない私はとりあえずおすすめを指さす。
「えっと、私黒糖ミルクティーで」
「私は……ロイヤルキャラメルミルクティーでお願いします」
美月は手慣れた様子で支払うと、そのまま窓側の席を陣取る。
間もなくして注文したタピオカが届いた。
カップの中で黒いタピオカがぷるんと揺れる。ほんのり甘いミルクティーの香りが広がる。
「!おいひい!」
「美味しいでしょ。ここ、お気に入りなんだ」
美月は自慢げに微笑む。
そんな顔も可愛らしいな、なんて思いながらストローに口をつけると、甘い味わいが満ちていく。
「ねえ、愛ちゃん」
美月は、自分のカップを私の目の前に差し出す。
「私の、飲んでみる?」
その言葉に胸が高鳴る。
これって間接キス…てやつですよね。
いいのかな…いや本人が良いっていうならいいんだろうけど…
「飲まないの?」
彼女は上目遣いで私を見つめてくる。
ダメだ、死ぬほど可愛らしい。
私はそっと彼女のストローに口をつけた。
~つづく~
****
次回──第8話 私たち、ズッ友だからね!
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