12 決心
俺は集団の来た方向に走っていた。
走っているのはそっちに何かあるのではないかと思い、急いでいるのもあるが、リーダーの男の底知れないところに少しだけ恐怖も感じたからもある。
戦闘能力という面で言うなら、リーダー含めたあの集団を俺一人で殺し尽くせる自信はある。
だが、何か不確定要素がある気がして、戦いたくはない。
完全に予測にはなるが、俺以外でボスを倒したのはあの集団だと思う。
そもそも俺はスキルを色々持っているから例外にしても、基本的にソロでボスを倒すのはマジでキツい。
ボスゾンビの時はモンスター発討伐によって韋駄天があったからギリギリ勝てたのだ。
そういった初系のスキルを持ってないとソロでは討伐できないと思う。
それに加えてあの男だ。
必ず何かがある。
ワンチャンボスを単独撃破できる可能性もある。
まあ早々出会うこともないだろう。
そして、俺が走っていると、とある場所に出た。
「いや、まじか…」
俺はこの空間は人間の技術が発展していなくて、現地民も小さな村で生活していると思っていた。
俺が森に転送されたのは、この世界は森ばかりで街などはないからだと。
だけど…
こんなにでかい街があるなんて。
巨大な壁に囲まれている街
中世の城塞都市みたいだ。
なるほど。
俺は完全にハズレの転送地を引いたというわけか。
誰もいないような森の中
モンスターも急に襲ってくるような場所
多分あの集団も街に集まった奴らだったのだろう。
俺の初日の肉を焼いてサバイバルしていたのはなんだったのか。
街では食料も買えるだろう。
いやね、別にね、サバイバルしたことも悪いことばかりじゃなかったよ?
たくさんスキルを手に入れられたし。
初っ端初見殺しで死にかけたり、人に突然銃で撃たれたり、ボス相手に死にかけたりしたけどね。
まあ、安全なところに転送された人は羨ましいなと思うわけですよ。
はぁ。そんなこと言っても仕方ないし、街に入るか。
そうして、俺が街に近づいていると、
『人間在住エリアに入りました。ポイントを硬貨に変換することが可能になりました』
いつもの音声さんが聞こえた。
ポイントなんて謎制度は普通の街では使えないということか。
「基礎情報」
———————————————
神崎 裕也
17歳
男
ポイント497
———————————————
こんだけポイントあるけどどのくらいのお金になるのかな?
「硬貨に変換」
『何ポイントを変換しますか?』
「とりあえず10ポイントで」
すると10枚の硬貨を手に入れた。
これでどのくらいの価値になるのだろうか?
街の入り口まで行くと、門番がいた。
「鑑定」
———————————————
門番B
街Aの第二入り口を守っている
———————————————
名前適当かよ。
というかこの街も街Aって。
このゲームのゲームマスターが面倒くさがったんだろうな。
「この街に入るには通行料として硬貨1枚を渡せ」
門番がそう言ってきた。
門番に硬貨1枚を渡して門の中に入る。
街に入ることができた。
異世界って感じだなぁ。
異世界の定番では冒険者登録とかするんだろうけど、俺たちにはポイントっていうモンスターを倒せば手に入る報酬があるからな。
そもそも冒険者というものが存在するのかも不明だし。
とりあえず、色々街を見て回ることにしよう。
それから街の色々なところを回った。
鍛冶屋があったので剣をみてみたり、食事処で食事をしたり、宿屋があったのでそこに泊まったり。
うん。平和!
鍛冶屋では剣を見たが、不壊剣の方が優秀そうだったので買わなかった。
プレイヤーの選択肢に銃があったから、売ってるのかと思ったけど売っていなかった。
食事処ではパンにスープが付いてくるメニューを頼んだ。
味付けが大雑把だったが、普通に美味かった。
宿屋では普通に金を払い、泊まった。
なんと1泊硬貨1枚!
めっちゃ泊まれる。
ベッドは少し硬かったが昨日まで野宿だったので天国みたいだ。
結局その日は久々の全く命の危険がない場所でぐーたらしてしまった。
次の日の朝
俺は何故戦っているのだろうと思った。
昨日までは戦わなければ生き残れない状況だった。
だけど、ここに入れば死ぬことはない。
夜に少しだけ外に出て、弱いゾンビとか狩れば生活もできる。
もう戦う必要なんてないのだ。
他の人がボスを倒してゲームを進めてゲームをクリアする。
そんな他人任せの生き方でもいいのではないか。
そうしたら死ぬことはなく、元の日常に帰れるのではないか。
そんな考えが頭の中に出てきてしまった。
だけど、怖いのだ。
自分が弱者でいることが。
いつこの平和がなくなるかわからない。
いつ俺に理不尽が降りかかってくるかわからない。
もし、俺より強い奴が俺の命を狙ってきたら?
もし、ゲームのミッションで強制的に外に出ないといけなくなり、周りが今よりも圧倒的に強くなっていたら?
それが心の底から怖い。
死ぬことよりも、死ぬことを恐れることの方が怖い。
「行くか」
俺は街を出る準備をする。
ここは俺にとっては緩すぎた。
そしてこの日、俺のこのゲームの生き方が決まった。
最強であろう
誰も敵わぬほど
誰に命を狙われようともそれを弾き返せるほど
生きよう
決して死なず、生き延びる
ゲームをクリアするその日まで
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