地球は保護国になりました~宇宙人とのほのぼの?日常小噺~

九束

ファーストコンタクト狂騒曲

『―――直径およそ100メートルはある円盤状の物体が、国連本部前のイースト川に―――』


『国連本部前に停泊する不明船舶に関し……えっ?イルカ型の宇宙人が!?』


『銀河連邦による加盟要請声明を受け、国連本部では地球統一政府設立に向けた―――』


『―――合衆国が拒否権を行使したことにより地球統一政府案は廃案に』



『――』




『―』














「ファーストコンタクト狂騒曲」と名付けられた3か月のニュース映像がまとめられたプレイリストを見ながら思わず遠い目になる。

リアルパイセンってたまにリアリティを置き去りにしてはっちゃけるよなぁ…。


人生どうしてこうなったと思うことはよくあるが、それにしてもやり過ぎじゃないか?

と、この3か月間の出来事を振り返って思わずにはいられない。




3か月前、突如地球に宇宙人が襲来した。


当初は友好的だったイルカの宇宙人。


国連本部で

「うち、銀河連邦やってるんだけど入らない? 技術供与とかもするよ? 仲良くしようよ」

「時代はラブアンドピース! 人類統一しておいでよ宇宙!」

といった感じで友好ムードだった。


が、そんなチャンスをふいにする人類。


人類恒例の隙あらば内ゲバ、踊る会議。


あー! アメリカ君拒否権を発動しました。

地球統一政府は否決! 否決です! 終了! 閉廷! 解散!


か~ら~の~抜け駆けコンボで「俺だけで連邦にいーれて!」したアメリカ。

俺も俺と言い出した常任理事国の国々。


お前らストラテジーゲームのプレイヤーかなんか?

ってレベルでまとまらない人類。


宇宙人にダメですされた。当然だよなぁ。

宇宙人は「人類統一して」って言ってたじゃん。話聞いてた?


そのまんま何やかんやあってなんか宇宙人を怒らせたのか、いつの間にかイルカ型宇宙人がすっこんで、代わりに出てきたオークみたいな宇宙人から迫真の一転保護国化の勧告。


なんかアメリカがぶちぎれて日本海でUFO落としちゃった。

アメリカ? 何やってんのアメリカ? やるにしても他所でやってくんない?


翌朝ニュース見たときはこう思ったね。

「あぁこりゃダメだ、もう助からないゾ」って。

正直自分と家族だけ生き残るための算盤を弾いてたぞ。


だけど宇宙人思ってたよりやさしいやつらだったっぽい。


すわ宇宙戦争かと思ったがそんなことはなく、インディペンデンスデーイとか大統領が叫んでいたアメリカもいつの間にかトーンダウンしていき、よくわからないうちに地球の各国は宇宙領有権とやらを凍結され、各国に前FTL文明保護観察官とかいうのが派遣されて銀河連邦構成国によって保護国化されていった。


アメリカは国連で保護国化の勧告を行っていたバリバリ武闘派のオークみたいな宇宙人の国家が宗主国になった。

残念でもなく当然だね。


今思い返しても何やってんの人類という感想しかない。


考えられる範囲で最悪のオウンゴールしてない? 人類。


良く滅ぼされなかったな人類。


よく滅ぼさないな宇宙人。


そして日本はエルフ部族連合によって保護国化された。

人類が想像するエルフそのままの見た目で、イメージ通り長命種。

寿命は人類の十数倍もあるらしい。

ただ、ファンタジーと違って科学万歳主義。

まあSF世界の住人だからね。仕方ないね。


このエルフ部族連合、長命種だけあって銀河連邦設立メンバーとのこと。

なんでそんな主要国が日本を保護国に?


それは…


「田中ぁー、次の講義のデータは変換終わったー?」


後ろから女性の声。

振り向くと白い髪を腰まで伸ばしたエルフ女性が袋を持ちながら羊羹を食べて立っている。

袋には有名な老舗羊羹店の名前。


「もう出来てますよボス」


「あいあいー…にしてもやっぱりこの羊羹おいしいわねー。辺境くんだりにこんなおいしいものがあるなんてっ!あ、そうだ。神戸牛しぐれ煮ポチってたんだけど届いてる?」


「なんか毎日つまみやら和菓子やら届いてません?」


「私たちエルフの好みにドンピシャな料理やら和菓子とか作ってる日本人が悪い。何のために私たちが日本を保護国化したと思ってるのよ」


【悲報】日本、和菓子と酒のつまみで銀河連邦主要国を一本釣りした模様【朗報?】


あの、リアルパイセン、それは…それはさすがにあんまりでは…?


そう思わずにいられないが、実害もないしメリットしかないので受け入れるしかないのである。


「あ、そうそう講義終わったら早上がりして相談乗ってもらうからおいしい居酒屋予約よろしくね。絶対よ!」

「ういっす」


そして、どこにでもいる平凡なおっさんである俺こと田中は今、転職してエルフの観察官の秘書めいたことをやっている。


本当に人生何があるかわからないものだ。

3か月前はどこにでもいる会社員だったんだけどなー。

不思議だなぁ。

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