推しの熱愛報道

「そんな。こんなのってあんまりだ……信じてたのに」


 屋上にて、大樹が悲しそうな表情で悲痛の叫びをこだましていた。


「大樹~? なにかあったの~?」


「莉奈……もうなにかあったとかそんなレベルじゃねえよ……心にぽっかり穴が空いたって言うか、大切な人を失ってしまった。そんな気分さ」


「え、ごめん。それ僕が聞いても大丈夫な話?」


「ああ、気にしないで。多分莉奈が思ってるほど深刻な話じゃないから」


「そうなの? 辛かったら無理に話さなくてもいいけど?」


「いや、莉奈がいいなら聞いてくれたほうが嬉しいかも」


「いいよいいよ。話したら楽になることも多いし。なりより僕は大樹の彼女だからね~! それで、なにがあったの?」


「実はね。俺が応援している男の娘系アイドルに彼氏が居たんだ」


「……えっ?」


「彼女が出演していた番組はたくさん見てたからね。応援してただけに本当にショックだったよ」


 男の娘系アイドルということは、男の子。その男の子に彼氏が居たので、大樹は落ち込んでいると。


 男の子に彼氏? つまり実質BL?


「確かに、芸能界にはたくさんカッコいい人がいるだろうから仕方ないのかもしれないけれど、それでも、ファンも大切にして欲しかったのが本音かな」


「でも男の娘ということは自認は女の子だし。でも、うーん……」


 僕の性癖が壊れる音がした。


「ちょっともう今までと同じ気持ちで彼女の出演ドラマやバラエティを見ることはできない」


「あの、色々複雑な心境だとは思うんだけど。その人のこと詳しく教えてほしい~!」


 その後、その子について根掘り葉掘り聞いた。僕はBLもいける口なのだ。


 春山飛優。金髪ショートカットの男の娘系広島ローカルアイドル。公式の性別は不明だが、最近熱愛報道が出た。一部層に絶大な人気を持っているらしい。


 あと、熱心な広島の野球ファンのようだ。僕と同じだ。


「週刊誌にね、熱愛発覚とか書いてあったんだ」


「それは、推しだったら辛いかも」


「もう、手とか繋いでるのかな」


「えっ? 手どころの話じゃないと思うけど。違うところを抜いたり繋いだり、暴れたりしてると思うよ~?」


「じゃあもう、キスとかしてるのかな」


「キスは分からないね。僕たちもしたことないし、案外やってないのかも。ていうかさ、僕たち健全すぎない? なんでカップルになったのに、体を重ねる行為はおろか、キスもしてないの?」


「いやあれ、雰囲気とか大事じゃん?」


 大樹は当たり前のようにそう言った。


「大樹って、そういうところ大事にするよね~」




◇おまけ。同時刻頃の校長



「飛優ちゃんに、彼氏が? 殺す、彼氏殺して私は刑務所に行く!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る