第十六話:共闘の拒絶と、盟約の始動
「馬鹿なことを言うな、碧斗!災厄の器と手を組むだと?それは僕たちの祖先が千年かけて背負ってきた悲願への最大の裏切りだ!」一葉は、青白い禁呪の紋様が刻まれた右手を握りしめた。
「一葉、落ち着いてくれ!」碧斗は説得を試みる。「君の命が削られているのは、
「それが九ノ会の宿命だ!」一葉は叫んだ。「僕の短命は、龍を封じ続けるための代償だ。美咲の甘言に乗せられ、僕たちの力を解毒のためだと信じるのか?」
碧斗は、美咲が自らの手で生み出した清浄な雫の力を、一葉の手首の紋様にそっと触れさせた。紋様は一瞬、強く清浄な光を放ち、すぐに消えた。
一葉は息を呑んだ。彼の体内の瘴気が、微かにだが浄化された感覚を覚えたのだ。
「…この力は」
「信じてくれ、一葉。僕たちの使命は断罪ではなく、解毒なんだ。今だけ、手を組もう。水源を解放すれば、君の命も救える。そして、辰砂という真の敵を討つことができる!」
一葉は葛藤した。千年続く九ノ会の教えと、体で感じた清浄な力。そして、何よりも、美咲を殺さなければならないという使命からの解放。
「…わかった」一葉は低い声で言った。「だが、これは一時的な盟約だ。水源を解放したら、美咲は僕たちの監視下に置く。決して、僕たちの悲願を汚させるな」
一葉は、屈辱と生存への本能の間で、美闘との共闘という危険な賭けを受け入れた。
その日の深夜、水源奪還作戦が静かに始動した。
水守の宮側からは、美咲、迅、禊の三人が出立。美咲は、体内に力を満たし、『自浄』で生み出した清浄な力で武装していた。
「龍神様、もし九ノ会が裏切ったら、即座に離脱を」
「大丈夫よ、迅。彼らは
美咲たちは、再び神社の地下へと向かう。
地下水脈にたどり着くと、そこには先に到着していた一葉と碧斗が待っていた。一葉は黒い
「遅いぞ、災厄の器」一葉はそう呼ぶことで、美咲との間に距離を置いた。
「一葉くん」美咲は憎しみではなく、静かな意志を込めて彼を見つめた。「水源を解放する。あなたは、私を信じて、禁呪を解いて」
共闘の誓い
美咲は、硬化し、黒い穢れが表面に染み込み始めた地下水脈の中心へと踏み出した。
「作戦通り、まず一葉くんの禁呪で水脈の硬化を解除する。その瞬間、辰砂の穢れが噴き出すわ。私が『自浄』の力で、その穢れを一気に清浄化する!」
一葉は、美咲の覚悟に一瞬ひるんだが、すぐに冷徹な表情に戻った。
「いいだろう。貴様の清浄化が、本当に僕たちの命を救う力なのか、この目で確かめてやる」
一葉は右手の紋様に力を込め、地下水脈を覆う禁呪の札に向かって、逆の術式を流し始めた。
キィィィン…!
禁呪の青白い光が、解除される音を立てて空間に響き渡る。長きにわたり水源を封鎖していた壁が、崩壊を始めた。
美咲と、一葉率いる九ノ会。千年敵対し続けてきた二つの勢力が、共通の真の敵を討つため、地下深くで一時的な盟約を結び、運命を懸けた作戦を開始した。
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