夕暮れ

鈴音

夕暮れ

 私の好きな人は明日引っ越してしまう。夕暮れ時に何でもないようなふりをして一緒に帰る。ずっと一緒だった。本当は引き止めたかった。でも、彼の夢のためには引き止めることなんてできない。

 彼は、好きなキャラメルを口に入れる。毎日、彼はキャラメルを食べる。いつも同じキャラメル。ずっとそうだった。いつも好きなものには一途。そんな彼が好きだった。

 勇気を出してそっと手を握ってみた。あたたかくて優しい手。その優しい手は握り返してくれた。その手は微かに震えている。

 思わず彼の方を向く。すると、彼は私に優しく口づけた。キャラメルの味がする。私は泣いた。でも、彼も一筋の綺麗な涙を零していた。

「さようなら。」

 そう言って彼は手を放して歩き始めた。私はその場に立ち尽くすしかなかった。

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夕暮れ 鈴音 @suzune_arashi

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