第9章 未来を知るもの


季節は初夏を迎え、岩出山の城下町は新緑に包まれていた。

しかし、その美しさとは裏腹に、戦の気配は日に日に濃くなっていく。悠真は政宗のために農業の改良案や簡単な医療知識を提供しながら、未来の情報が戦局に及ぼす影響を考え続けていた。

そんな中、楓との距離は確実に縮まっていった。

ある夜、月明かりの下で語り合う二人。

「あなたがここに来てから、少しずつ変わってきた気がします」楓は静かに言った。

「でも、それが良いことなのか、悪いことなのか、分からなくなることもあります」

悠真もまた、胸の内を吐露する。

「未来を知るということは、時に重荷になるんだ。歴史を変えることの責任は想像以上だ」

互いの思いを共有することで、二人の絆は強まっていった。しかし、その未来の知識が周囲の目を引き始める。

政宗の家臣・村井仁兵衛は悠真を警戒し、密かに彼の動向を探るようになった。

「奴は何者だ?異端の知識を持ち込み、歴史を狂わせるかもしれん」戦乱の世は油断が許されない。

悠真の存在は、政宗の陣営内に波紋を広げていった。

ある日、悠真は楓からある秘密を打ち明けられる。

「私の家族は、かつて政宗さまの策略で失われたのです。」その言葉に、悠真は胸が痛んだ。

「それでも、楓さんは政宗さまを信じ、未来を託そうとしている」その強さに、悠真は深く心を動かされた。

だが、戦国の夜は長く、二人の平穏な時間は少しずつ崩れていく予感をはらんでいた。

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