第8章 楓
政宗の館での生活が続く中、悠真はある日、侍女のひとりと出会った。
彼女の名は楓(かえで)。
楓は凛とした佇まいを持つ若い女性で、戦国の混乱の中にあってもどこか柔らかな光を放っていた。
その瞳は深く澄み、知性と覚悟を秘めている。
「新参者の方ですね。私、楓と申します」
彼女の声は穏やかで、それでいて芯の強さが感じられた。
悠真はその瞬間、心が少しだけ緩むのを感じた。戦乱の中での孤独感、未来を背負う重圧が一瞬だけ和らいだ。
楓は政宗の側近として働きながらも、身分の低さゆえに常に緊張を強いられていた。
しかし、その心の奥には、政宗の未来にかける強い信念と自分なりの使命感があった。
「この時代で、何をすれば良いのか……」
悠真は自問しながらも、楓の存在が自分の中で大きな支えとなることを感じていた。
二人は少しずつ距離を縮め、言葉を交わすごとに理解を深めていく。
政宗の策略や戦の情報、庶民の暮らし。
時折見せる楓の笑顔に、悠真の胸は温かくなるのを感じた。
しかし、戦国の世は容赦なく、二人の絆にはいつも危険が付きまとうことを、まだ知らなかった。
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