第14話 アルディア・シクシス
二人はギルドの外に出る。
「…さて、防具の修理が終わるのは明日か…今日はもうやることがなくなってしまったのだが、どこか行きたい所とかはあるか?」
「そうですね…この町を発つのはいつになるのですか?」
「防具を受け取ったらこの町にいる理由はなくなるからな…早くて明日にはこの町を発とうと俺は思っている」
「なら、買い出しに行きましょう!」
「買い出し?何か必要なものがあるのか?」
「まずは食材を買おうと思います!ウェインさんは調理器具などはお持ちでしょうか?」
「いや、調理器具の類はかさばるので持っていない」
「……ちなみにウェインさんは冒険中いつも何を食べているのですか?」
「基本的には干し肉、そこらに生えている木の実…狩れそうなモンスターを狩って適当に焼く…そんなかんじだな」
「ほとんど自給自足なのですか?」
「町に留まっている奴らはともかく、冒険に出ている者はほとんど自給自足だぞ?」
(エリシアはフリンダルの冒険譚の中で出てきた知識しかなさそうだな…)
「そうなのですか…では食材は買うのをやめるとして…美味しく食べるために調理器具を買いましょう!私が持ちますので!」
「うむ、別に構わないが…」
「ではまず昨日の道具屋に行きましょう!確か調理器具も置いてあったはずです」
「何でも置いてあるのだな、あそこは….」
そして2人は昨日行った道具屋へともう一度いくのであった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
道具屋の中
「いらっしゃいま……って昨日の二人じゃない!また何か買いに来たの!?」
「二日連続で来るつもりはなかったがな…」
「昨日ぶりですね…えっと……お名前は何でしたっけ?」
「あれ?私名乗ってなかったっけ?うーん…名乗ってなかったね!私の名前はメイナ・オーネスって言います!町の皆んなからはメイナちゃんって呼ばれてるのでぜひお二人もメイナちゃんって呼んでね〜」
「メイナちゃんですね!私はエリシア・セインレットと言います」
「……ウェイン・ノクナリアだ。それで買い物をしたいのだが」
「今日は一体何を買いに来たの?」
「調理器具…フライパン…鍋…お玉…木製の皿と金属のスプーン、フォークが2人分…そんなところか?」
自分が考えられる必要な調理器具を言い終えた後に隣のエリシアに聞く。
「そうですね……一旦はそれくらいで良さそうです!」
「了解!お皿と食器は後にして…まずはフライパンから選んじゃいましょうか!」
そうしてウェインとエリシア、道具屋の店主メイナは冒険の途中で使う調理器具を一生懸命選ぶのであった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「ふぅ〜…じゃあこれで決まりね?」
「はい!お願いします!」
「おっけ〜…あ…君たちお金あるの?」
昨日の金欠具合を思い出してメイナが言う。
そしてなぜかエリシアが誇らしげに答える。
「ふっふっふ!私たちは昨日とは違い、ある出来事で小金持ちになったのです!」
「へぇ〜?何があったの?」
「それは…」
エリシアが答えようとするもウェインが肩をポンと叩き会話を止める。
「…あまり金銭について他人に言うものではない…と俺は思う」
「そ…それもそうですね…少し気分が舞い上がっていました…ごめんなさい」
「いや…謝ることではない」
「そうね、こちらも商売人として少し軽率だったわ。ごめんなさい」
「いや…早く会計を頼む」
「は〜い!えっとぉ〜…全部で4170ルミナでーす」
「えっと………はい、これでお願いします」
そう言ってエリシアは銀貨42枚出す。
「4200ルミナお預かりしまーす。はいこれおつりの30ルミナね」
メイナはおつりで銅貨30枚をスッと出す。
そしてエリシアは調理器具と共に買ったバックパックに少し小さめのフライパン、鍋、金属でできたお玉、加工してある木製の底が浅い皿と深い皿を2皿ずつ、袋に包んだ金属のスプーンとフォーク2セットの計11点を入れていく。
「…全部詰め終わりました!」
「よし………エリシア、君はお腹空いてないか?」
「へ?まぁ…朝食を取っていないので空いてはいます」
「俺も朝は何も食べていなくてな…今から少し遅めの朝食でも食べにいくとしよう」
「はい!」
「二日連続で来てすまなかったな。高額な物は次に来た時に買わせてもらう」
「何かと親切にしていただきありがとうございましたー!」
そう言って2人は店を出ていく…その時、
「ちょっと待ったー!」
メイナが2人を止める。
「?何かありましたか?」
「そうじゃなくてー…」
そう言うとメイナはカウンターから出てウェインとエリシアの所へ小走りで向かう。
「私も朝食べてないから一緒に行こうと思って」
「…店番はどうする?職務放棄だぞ」
「大丈夫!弟に任すから!店番頼んだーー!!!」
メイナがカウンター奥の部屋に大きな声で言うとそこから「任されたー!!!」と若い男の声が返ってくる。
「じゃ、行きましょ!」
メイナがルンルンで店の外に歩いて行く。
「弟さんいらっしゃったんですね…」
「そうだな…やつを見失わないように早くついて行くぞ」
ウェインとエリシアは先に進んでいるメイナに着いて行く。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「ここにしましょ!」
そう言うとメイナは少し歩いたところにある酒場の前で足を止める。
「酒場…ですか?」
「酒を飲む予定はないのだが」
「違う違う!この酒場は料理がめっちゃ美味しいのよ」
そう言って酒場の中に入って行く。
「…自由な人だ」
「ですね…」
そして2人も中に入る。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
酒場の中
酒場の中は少し暗い雰囲気でザ・酒場といった様子だ。
三人は壁側の席に座る。
「お料理がたくさんありますね!」
メニュー表を見てエリシアが言う。
「…確かに通常の酒場よりもメニューが多いな」
「ここの酒場の店主のおじさんはお料理が大好きでね?思いついた料理をメニューに片っ端から追加していった結果、食事のメニューだけでなんと41種類もあるわけ」
「すごいですね…」
「注文する物は決まった?」
「…ああ」
「えっと…はい!決めました!」
「よし、ミーちゃん!注文いい!?」
そう言って一人のウェイトレスに声をかける。
「あ!メイナちゃん!…とお連れの方ですか?」
「そう、友達なの〜!注文いいかしら?」
「はい!どうぞぉ!」
「私は…ベリーラビットの煮込みハンバーグで!ライス追加で!二人は?」
「俺はレッドチキンのささみサラダ…あと角牛のチーズと立ち豚のベーコントーストを頼む」
「私はレッドチキンのオムライスをください!」
「了解しました!お料理出すのは同時でよろしいですか?」
「大丈夫!」
「はーい、少々おまちくださいませー」
そう言ってウェイトレスは厨房の方向に向かって行く。
「そういえば二人は冒険者よね?しばらくここに留まるの?それとも別のところに向かうの?」
「私たちは明日、この町を出る予定です」
「どこに向かう予定なの?」
「それは…えっとどこに行くのでしょう?」
そうして二人の視線はウェインに集まる。
「そういえば、言っていなかったな」
ウェインはそう言って地図を出して机に広げる。
「俺が南部大陸であと行っていないのは地図で見て南北方向…[ハイナー]の町があるところだけだ。だから次はハイナーの町の方向に向かう」
「人形の町ハイナーですね!了解です!」
「ハイナーかぁ、あそこの人形すごく作りが綺麗なのよねぇ。職人の魂が一つ一つの人形に宿っているのよ!」
「そうなんですね!どんなお人形と出会えるか楽しみです!」
「…買うのか?」
「…!いえ!旅に必要な物ではないので今の所買う予定はないです!」
「本当に作りが良くて可愛い人形ばっかだから寄ったなら買った方がいいと思うよ〜?」
「……考えておきます」
そう他愛もない会話をしていると先ほどのウェイトレスが料理を持ってくる。
「おまたせいたしましたーこちらレッドチキンのささみサラダと角牛のチーズとベーコンのトーストでーす」
「…ありがとう」
「こちらはレッドチキンのオムライスでーす」
「ありがとうございます!」
「こちらはベリーラビットの煮込みハンバーグでーすとライスでーす」
「いつ見ても美味しそう!ていうか美味しい!」
「ご注文されたお料理は全て来ましたでしょうかー?」
「ああ、問題ない」
「では伝票でーす!ごゆっくりどうぞー!」
「…じゃ食べちゃいましょうか!」
「「「いただきます」」」
そう言って三人は各々目の前の料理を食べ始める。
「…!美味しいです!卵はほんの少し甘くて、中のチキンライスは少し酸味が効いていて、このバランスが絶妙に噛み合っていてすごく美味しいです!」
「うんうん!美味しいでしょう?ここの料理。ほんと全部絶品なのよねぇ…ウェイン君のお口にはあったかな?」
チーズとベーコンが上に乗っているトーストを黙々と食べるウェインにメイナが聞く。
「……。今まで寄ったどの酒場の料理よりも美味しい…と思う」
「ほんと!自分がよく来る店を良く言われると我が事のように喜んじゃうわー」
そうして少し時間が経ち、全員が食事を終える。
「ふぅー食べた食べた!」
「本当に美味しかったですね!」
「ああ。少し休んだら酒場を出……」
ドオォォォォン……!
ウェインがそう言い終える瞬間に近くで爆発音?のような音が街に響き渡る。
「「!!!」」
「何だ今の音は?」
「少しだけ振動も来ました…!」
「おー久しぶりの出動だぁ」
「ウェインさん!この人すごく冷静です!」
「だってぇこれ日常風景?みたいなもんだし」
「え?それは…どういう…?」
「……そういうことか」
「お?ウェイン君はやっぱり気づくか」
「あの音の原因が分かったんですか?」
「ああ、すまない…行かなくてはいけない場所ができた。金はここに置いておく、先に失礼する」
そう言ってウェインは自分の分の食事代を置いて店を出る。
「あ…!待ってください!」
そう言ってエリシアも食事代を置いて店を出る。
「いってらっしゃ〜い」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
店の外
ウェインは音が鳴ったであろう方向に向かって走る。そして走りながら周囲を見る。
(…やはり、思った通り町の人間は誰も慌てている様子を見せない。ということは…)
すると、
「ウェインさん!どこに行くんですか?」
エリシアがウェインの後を頑張ってついてきていた。
「あの音が鳴った所に今から行く。」
「音が鳴った所?ですか?」
「ああ、少しこの音を出したやつに興味があってな」
そうして引き続き音が鳴ったところへと走って向かう。
(あの地面に着地したであろう音はやはり町の少し外か…)
そう思いながら走っていると、
前方の…町を少し離れた所からスタスタとガタイの良い男が歩いてくる。
「……!」
ウェインは瞬時に気づく。
「やはりか、」
「?」
「やつがこの町の守護者、アルディア・シクシスだ」
冒険者と神官、長き旅を行く メンドット @mendotto777
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。冒険者と神官、長き旅を行くの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます