第22話:公認ペア、社内インタビュー
翌週の朝。
オフィスの掲示板に、ひときわ目立つポスターが貼られていた。
【社内広報特集】
『理想の上司と部下が語る――信頼のカタチ』
出演:広報部 柊 誠 × 営業部 藤原 真由
(……出た。タイトルがもう“誤解してください”って言ってる)
「真由〜、ついに公認ペアデビューか〜!」
「ち、違います! 勝手に広報が決めただけで!」
「いやいや、社長コメントまで載ってたぞ。“理想の連携”って」
「うわぁ……終わった……!」
柊が通りかかる。
「……終わってない。むしろ始まりだ」
「課長っ!」
「この特集、俺が許可した」
「なんでですか!?」
「逃げるより、正面から話した方が早い」
「……ほんとに真っ直ぐすぎます!」
(また反則みたいなこと言う……!)
⸻
昼。
会議室。
取材チームが準備を整えていた。
テーブル中央にマイクとカメラ。
二人並んで座る。
「本日は“理想の上司と部下”特集ということで、
お二人に“信頼関係の築き方”についてお話を伺います!」
美咲(記者役)「お似合いですね〜、本当に!」
「ちょ、ちょっと美咲さん!」
「はいはい、リラックスして〜!」
柊は微笑んで軽く頭を下げた。
「よろしくお願いします」
「……よろしくお願いします」
⸻
インタビュー開始。
美咲「まず、お互いの第一印象を教えてください」
柊「真面目で、でも目がよく動く人だと思いました」
「め、目が!?」
「はい。常に周囲を見て、誰かのために動こうとしてる。
それが印象的でした」
(なんか……ずるい褒め方……)
美咲「藤原さんは?」
「えっと……最初は“ちょっと怖い人”だと思いました」
「ほう?」
「でも、実際は……一番人の話をちゃんと聞いてくれる人でした」
柊「それは評価してるということでいいか?」
「はい。……多分、誰よりも」
一瞬、沈黙。
けれど、その沈黙が妙にあたたかかった。
⸻
美咲「では、“信頼”って、どんな瞬間に感じますか?」
柊「……難しいですね。
でも、“言葉を交わさなくても伝わる”と思えた時です」
美咲「たとえば?」
柊「会議中、目が合っただけで“あ、理解してくれてるな”と感じた時とか」
真由「(え、そんなの気づいてたんだ……)」
美咲「お二人、目が合う頻度多いですよね?」
「そ、そんなことないですっ!」
「……多いな」
「課長ーーー!」
成田(後方でニヤニヤ)「これは編集で使われるやつ」
美咲「絶対使う」
⸻
質問は続く。
「SNSでの発信が話題になりましたが、
お互いの“発言”をどう受け止めていましたか?」
柊「彼女の投稿には、“素直な現実”がある。
言葉を飾らず、まっすぐ届く」
「そ、そんな……」
「俺が何度も救われた」
(……またそんな真顔で)
美咲「では、藤原さんは?」
「柊さんの言葉は……怖いくらい正直です。
でも、だからこそ信じられる。
“偽りがない人”って、すごく強いと思います」
カメラの赤ランプが光る。
一瞬だけ、二人の視線がぶつかる。
空気が変わった。
美咲「……これ、リアルに恋バナ記事にできるんじゃ?」
「美咲さん!?」
柊「仕事の話です」
「そ、そうです!」
美咲「はいはい、“仕事”ね(にやり)」
⸻
取材終了後。
外に出ると、もう夕方だった。
「……本音、多かったな」
「ですね……」
「でも、ああして言葉にできるのは悪くない」
「私も、ちょっとスッキリしました」
柊が立ち止まる。
「――真由」
「はい?」
「“仕事の信頼”と“個人の気持ち”、どこまで分けられると思う?」
「え……」
一瞬、返事が詰まる。
「……正直、もう分けられません」
「俺もだ」
(……っ)
「……反則です」
「また言われた」
二人の影が、夕焼けに溶けてひとつになった。
⸻
夜。
社内広報の速報が届く。
【次号予告】
特集:理想の上司と部下が語る“信頼”と“想い”
――“言葉の距離”を超えて――
スマホを見つめながら、真由はつぶやいた。
「……もう隠せないな、これは」
すぐに通知が届く。
《@WORK_LIFE_BALANCE》
「“信頼”の先にあるのは、“好き”という感情だと思う。」
《@mayu_worklife》
「じゃあ、もうその先まで行ってますね。」
コメント欄が静かに燃え上がる。
そして誰もが思った。
――この二人の物語は、まだ終わらない。
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