曲がり角の衝撃とパンの香りを君に
俺の名前は高竹光立。あだ名はタケミツ。
想い人、野々宮夜昼さん、ヨルさんから「あんた気持ち悪いのよ」と言われた高校二年生だ。
今は彼女に相応しい男になるべく日々努力しているんだ。
出会いというのは大切だと思うんだ。
何事も最初が大事というよね。
俺のとヨルさんの出会いはそれはもう特別なものなんだけどそれはまた今度ね。
出会いについて考えているときに気がついた。
ヨルさんと運命的な出会いをすればいいのではと。
俺は少女漫画を読み漁り出会いのパターンの統計を取りビッグデータの解析を始めた。
企業戦略の論文をまとめているときに本来の目的を思い出して新しいビジネスチャンスを創出した。
名付けて「パンを咥えた曲がり角戦略」だ。
人はパンを咥えて曲がり角を曲がると誰かにぶつかると思い込んでいるらしい。
不思議なものだ、そんなこと起こるはずもないのに。
この戦略ではその思い込みを利用する。
俺が戦略の資料をまとめながらパンを咥えて曲がり角を曲がったとき彼女に出会った。
配達員のタツミ。
彼女は走って俺にぶつかった。
「いったーい! もうどこ見て歩いてんのよ!」
すまない、俺の不注意だ。しかし走ってぶつかったのは君の方じゃないかな?
その後も彼女は俺が曲がり角を曲がろうとすると向かって来るようになった。
たぶん待ち伏せされている。
格闘技界の刺客だろうか。
しかしこうも曲がり角で誰かとぶつかるのなら「パンを咥えた曲がり角戦略」は使えないかもしれない。
思い込みではないようだ。
きっと皆曲がり角で理想の恋人に出会っているのだろう。
俺は曲がり角の先にいるタツミの気配を察知しつつ引き返した。
タツミ、君もきっと曲がり角で素敵な恋人が見つかると思うぜ。
俺は曲がり角で偶然出会った鏡子と一緒に帰宅した。
俺はパンの香りで気がついた。
パンを作ってみたいと。
俺はエプロンを纏い小麦粉を激選しパン職人の大会に出場した。
パン職人との激戦を戦い抜いているときに本来の目的を思い出して焼き立てのパンの香りに包まれた。
「ケーキも好きだけどパンも好きよ」
食いしん坊のポラリスドイテルが審査員だった。両手にパンを持つその姿、美しいぜ。
俺のパンを手に取った彼女はピタリと動きを止めた。
目を閉じ鼻を利かせる。
突如目が開きパンをかじる。
何者にも替えられない、そういった面持ちの彼女が俺の勝利を宣言した。
すまない、そのパンは一つしか焼いてないんだ。おかわりを要求されても困る。
審査員がおかわりを要求するのは良くないんじゃないかな。
俺はパンの製法を設定の妖精イニにまとめてもらってから帰宅した。
俺は出会いについて考えているときに気がついた。
衝撃が必要なのではと。
俺は身体を鍛え技を鍛え衝撃波が出せるようになった。
格闘技のライバルと吹き飛ばし異世界の魔王を吹き飛ばしこの星に迫る隕石を吹き飛ばしたところで本来の目的を思い出して力を封印することにした。
すまない、この力は危険すぎる。
俺が自分自身の力に衝撃を受けているとき彼女が再び現れた。
ヒサエ。前に会ったときは卓球のコーチだったけど今は衝撃波のコーチらしい。
「力とは使い方だよ。ついておいで」
彼女は俺をどこかに連れて行こうとしたので断った。
すまない、もう封印することにしたんだ。コーチはいらない。
衝撃波界という世界があるらしい。なんだその危ない界は、関わりたくない。
俺は白い羽の君と野良ディベーダーにあとを任せて帰宅した。
俺は企業戦略をまとめパンの焼き方を覚え衝撃波が使えるようになったのでヨルさんに会いに行くことにした。
今回は出会いに拘りたいな。
とりあえず俺が焼いたパンを咥えて、衝撃波は……、危ないから無しで。
企業戦略からすると非効率なんだけど出会いなんてそんなもんだよね。そもそも俺は企業じゃないし。
それにしてもちょっとパンが大きかったかな咥えにくいし唾液でちょっとふやけてきた。
早くヨルさんに会おう。
緊張するな。
ヨルさんはどんな反応をするだろうか。
待ち合わせ場所にいたヨルさんに俺は声をかけた。
「んんんん、んんんんんんんん」
「何言ってのかわかんないしヨダレたれてるんだけど、気持ち悪い」
ヨルさんは去っていってしまった。
まあパンを咥えてたら喋れないよね。
フィクションの出会いを真に受けてはいけないということだ。
そんなことに気が付かせてくれるなんて。
やっぱり僕の初恋はいい香りだぜ!
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