輝かしい君に

 俺の名前は高竹光立。あだ名はタケミツ。


 想い人、野々宮夜昼さん、ヨルさんから「あんた気持ち悪いのよ」と言われた高校二年生だ。


 今は彼女に相応しい男になるべく日々努力しているんだ。


 ヨルさんといえばその輝かしい存在感な訳だけど、俺はもう一つあると思うんだ。


 ああ、いやいや彼女の魅力はもっと沢山あるんだけどね。俺の語彙力じゃ雄弁に語れないんだ。言葉というのは不自由だよね。存在してるものでしか語れないんだから。


 つまり何が言いたいのかというと強さだ。どんなものにも負けない強さ、輝かしい存在感と合わさって正に初恋って訳さ。


 俺は強さについて考えているときに気がついた。


 真の強さを知らないと。


 俺は格闘技のライバルと議論を交しディベートで争い本を読んで過去に知識を求めた。


 彼女とはそのときに出会った。


 時光出版社発刊「真の強さ」の登場人物、真華。


 女性でありつつ真の強さを追い続ける姿に心を打たれた。


 すまない、俺はこういう感動的な話に弱いんだ。


 彼女の出した答えは強さを追い求め続ける心、それこそが真の強さ。素晴らしい。正にこれぞ答えだ。


 珍しく本来の目的を達した俺は一緒に来ていた白い羽根の君と野良ディベーターと一緒にうどんを食べてから帰宅した。




 本を読んだ俺は気がついた。


 俺も本を書けばいいんじゃないかと。


 俺は設定を書き設定の設定を書き設定の迷子になった。


 設定の迷宮を彷徨っているときに彼女と出会った。


 設定の妖精イニ。彼女に出会った作家は今後本編を書くことが出来なくなるという。


「あなたは設定に取り憑かれてしまったの」


 すまない、俺が設定に凝りすぎてしまったせいだ。


 2000ページに渡ってヨルさんについて書いてしまった。これでも制御したつもりだったんだ。ちょっと筆が乗っただけなんだよ。


 ヨルさんのことを考えているときに本来の目的を思い出して設定の末尾に結びの言葉を書き加えた。


 俺の初恋は最高、と。


 イニが光に包まれ消えていく。


「あなたは設定の迷宮の出口を見つけたのね」


 すまない、俺は出口を見つけたわけじゃない。初恋を思い出しただけなんだ。君との出会いは楽しかった。


 だが作家を甘く見ないほうがいい。この人達はそんなもので迷って止まるほど真面目じゃない。


 いつか必ず君の存在を脅かすと思うぜ。


 気がつけば自宅の机の前。目の前には分厚い設定、いや俺の物語。俺はファイルにして本棚にしまった。


 気持ちよく就寝しようとしたところで格闘技のライバルが襲撃してきたので返り討ちにして俺の物語を読ませた。感想を聞きたかったが凄かったとしか言ってくれなかった。




 設定を書いた俺は気がついた。


 俺は想像力が足りないと。


 俺は本を読み空想に浸り宗教を興した。


 信徒たちの前で演説をしようとしたときに本来の目的を思い出して解散を命じた。


 すまない、正直やり過ぎた。


 俺は宗教の恐ろしさを知っている。関わらないに越したことはない。


 そんなことを考えているとき彼女と出会った。


 捜査官のケイコ。俺は教祖ということで彼女に尋問された。俺の胸ぐらを掴んだ彼女はこう言った。


「さあ、愛の自供をなさい」


 夕暮れの取調室、二人きりの空間で彼女の視線が俺を貫く。


「俺の愛は君のものにはならない」


 そう告げて俺は席をたった。


 すまない、強気な女性は嫌いではないけど君では無いんだ。


 もっと早く君と出会っていればあるいは……。


 だが大丈夫、きっと君にも愛の自供をしてくれる男性が現れると思うぜ。


 オルコが酒を飲んでふらついていたので酒を取り上げてから帰宅した。





 真の強さと設定の迷宮と想像力を鍛えた俺はヨルさんに会いに行くことにした。


 正直、輝かしい彼女になんて声をかけていいか分からない。


 でもここで足を止めてはだめだ。


 前に進まなくては。


 俺は待ち合わせ場所に向かう。


 緊張するな。


 待ち合わせ場所にいたヨルさんに俺はこう言った。


「君はとても眩しいよ」


「意味分かんない。気持ち悪い」


 ヨルさんは去って行った。


 やはりヨルさんの言葉は強い。


 その強さが俺をさらなる高みへと連れて行ってくれる。


 やっぱり僕の初恋は最強だ!

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