一人で君に

 俺の名前は高竹光立。あだ名はタケミツ。


 想い人、野々宮夜昼さん、ヨルさんから「あんた気持ち悪いのよ」と言われた高校二年生だ。


 今は彼女に相応しい男になるべく日々努力しているんだ。


 俺は遂にヨルさんと遊園地に行くことが出来たんだけど別の女の子と観覧車に乗っている所を見られていたんだ。


 俺は自分の行動を振り返って気がついた。


 ヨルさん以外の女性と関わり過ぎたと。


 俺は女性との関わりを断つ為に山に入り秘された寺で修行し真の男を決める大会に出場した。


 大会は三人一組だったので修行中に出会ったハルカ君とユウト君の二人とチームを組んだ。


 ハルカ君とユウト君は幼馴染で共に真の男になるべくお互いに高め合っていたらしい。


 しかし俺が思うに……。いや、よそう。


 俺が口出しをする問題ではない。


 三人で大会を順調に勝ち進み準決勝を目前にしたとき俺は本来の目的を思い出し二人に真実を問うことにした。


 ハルカ君、君、女の子だよね?


 俺の言葉に彼女は固まった。


「タケミツさん、何言ってるんですか。ハルカが女なわけ……」


 暗く俯く彼女を見てユウトの言葉は止まった。


「ごめん、ユウト。今まで黙ってて」


 彼女は自らが女であることをユウトに告げた。


 すまない、だがいつまでも隠し通せることではないと思うんだ。


 二人が言葉を交わさないまま準決勝の開始時間となった。


「ハルカ、俺はお前が男だと思って今まで一緒にいたんだ。だからこれからもこの関係でいよう。俺たちは清の男になるんだ」


「うん!」


 二人の感動的な場面に邪魔が入らないように対戦相手を黙らせていたら試合に勝った。


 決勝戦中にハルカ君の服が脱げて女の子だとバレるハプニングが起こって負けになった。


「女の子でも真の男になれる世界を目指します」


 ユウト君はハルカ君の手を引いて去って行った。


 ユウト君、俺は君の選択を祝福するよ。


 病めるときも健やかなるときも一緒にいてほしい。


 なぜなら、二人には明るい未来が待っているのだから。


 俺は真の男になった野良ディベーターを祝福してから帰宅した。




 

 帰宅してから気がついた。


 もっと修行がしたいと。


 俺はもう一度山に入り滝に打たれ水と一つになった。


 己の意識が世界と一つになる感覚に身を委ねていると神の座の彼女に「まだ早い」と言われて目を覚ました。


 そこは病院。


 どうやら修行中に川に流されたらしい。


 彼女と出会ったのはそのときだ。


 同じ病棟のソヨちゃん。身体が弱く病気がちで何度も入退院を繰り返しているそうだ。


 俺は彼女を励まし一緒にトレーニングしフルマラソンに出場することになった。


 明日がマラソン当日というときに彼女と話した。


「ありがとう、タケミツさん。私自分がこんなこと出来るなんて思ってもなかった」


「俺は何もしていない。君が頑張ったんだよ」


 その言葉を告げたとき、俺の視界はネジ曲がり暗転した。


 目を覚ますとそこは病室。何が起こったのか。


 折れはソヨちゃんに会おうと看護師さんに聞くもそんな患者はいないという。


 変だなと思っているとテレビで過去のマラソン選手についての特集をやっていた。


 数十年前にいたソヨという選手のことを。


 ああ、ソヨちゃん。君は成し遂げたんだね。


 すまない、側にいることができなくて。


 俺は養老院にいたソヨちゃんに顔を見せてから帰宅した。


 


 俺は一人になって気がついた。


 一人は寂しいと。


 俺は友達を作り紹介したい人がいるというので会いに行き人生を良くするための塾なるものに参加した。


「はい、みんな仲良し〜」


 塾の説明を受け入塾料が100万だと言われたとき本来の目的を思い出して俺は逃げた。


 すまない、それは俺が思っていた寂しさへの対処ではないんだ。


 人とお金で出会うことを否定はしないけど強要するのは良くないと思うぜ。


 ディベーターである俺でも躊躇する世界を感じながら帰宅した。


 真の男を目指し水と一つになり寂しさを知った俺はヨルさんに会いに行くことにした。


 早く彼女に会いたい。


 会って伝えるんだ俺には君だけだと。


 俺は待ち合わせ場所に走る。


 待ち合わせ場所にいるヨルさんに俺は息を切らせながらこう言った。


「俺には君だけなんだ」


「……いいわ。信じてあげる。でも息切れで気持ち悪いから近寄らないで」


 彼女は足早に去って行った。


 こんな俺を信じてくれるなんて。


 僕の初恋はなんて素晴らしいんだ!

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