第6話 挑戦と絆、翔太の成長

父・和也を失ってから数週間が過ぎた。

翔太はまだ心の奥で喪失感を抱えていたが、日常の中で少しずつ前に進む力を身につけつつあった。

ある日、翔太のクラスで「学校発表会」の準備が始まった。

クラス全員で劇を作ることになったのだが、翔太は演出係に任命された。初めての大役に、翔太は胸の奥で不安を感じていた。

「俺にできるかな……」

しかし、その時、父・和也の言葉が頭に浮かぶ。

「困難を恐れずに進むこと。それがお前の成長の糧になる」

翔太は深呼吸をして心を落ち着けた。

「よし、やってみよう」

放課後、翔太はクラスメイトのユウタやアヤと一緒に劇の練習を始めた。

最初は台詞を忘れたり、段取りを間違えたりして、クラス全体が混乱した。

しかし、翔太は諦めずに皆を励まし、アイデアを出し続けた。

「ここはこうしたら、もっと分かりやすくなるよ」

「僕、ここで歌を入れるのはどうかな?」

翔太の積極的な姿勢は、次第にクラスメイトたちの心を動かした。

ユウタもアヤも、翔太の提案に耳を傾け、二人で協力して作業を進めるようになった。

翔太はその瞬間、自分が一人ではないことを強く感じた。

父がいつも言っていた「人を信じ、愛すること」の意味を、翔太は少しずつ理解し始めていた。

劇の練習を続ける中で、翔太は自分の弱さにも気づいた。

人前で話すのが苦手な自分、失敗を恐れる自分……

そんな自分に直面した時、翔太は父の手紙を思い出した。

「人生は思い通りにならないこともある。けれど、困難を恐れずに進むこと」

翔太は目を閉じ、深く息をついた。

「弱さを恐れず、前に進もう。お父さんが見ていてくれる」

その夜、翔太は家で劇の台本を何度も読み直し、動きや声のトーンを考えた。

母・美智子がそっと部屋に入ってきた。

「翔太、頑張ってるわね。お父さんもきっと喜んでるわ」

翔太は微笑みながら頷いた。

「うん、お母さん。僕、頑張るよ」

発表会当日、翔太は緊張で手が震えていた。

しかし、父の笑顔を思い浮かべると、心が落ち着いていった。

舞台に立つと、翔太は自然にクラスメイトを見渡し、リーダーとして声を出した。

「みんな、準備はいい?やってみよう!」

劇は、翔太たちの努力と協力によって成功した。

観客席には拍手と歓声があふれ、クラス全員が達成感に包まれた。

翔太は舞台の袖で、涙をこらえながら笑った。

「お父さん……僕、やったよ。僕、強くなれたかな」

その夜、翔太は父の遺品の中から、和也が書いた小さなメモを見つけた。

「翔太、お前はもう立派に成長している。これからも困難を恐れず、愛する人を大切にして生きろ」

翔太は深く頷き、心の中で父に誓った。

「お父さん、僕、これからもずっと前に進むよ」

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