第2章 猫獣人メイド

第45話 そうだ、奴隷を買おう!

 

「猫獣人の女の子のメイドさんがほしいなぁ」


 ある時、勉強中のルシアンが呟いた。


「猫獣人ですか? どうしてまた急に」


「昨日の夜ね。リナに絵本を読んでもらったんだけど、猫獣人の子が出てきたの。その子の語尾が可愛くって」


 この世界の猫獣人は、古来より女性のみ語尾が特徴的であった。


「あぁ。『○○ニャ』ってやつですか」


「そう、それ!」


「ちなみにそれ、リナがセリフを読む時に可愛かったから気に入ってしまっただけなのではないですか?」


「えっ。そうなのかな?」


「リナに猫耳カチューシャを付けさせて、語尾をニャにして仕えさせればルシアン様の望みは叶えられますよ」


「それはもうお願いしたけど、恥ずかしいからダメって言われちゃった」


「おや。それは残念。彼女のそんな姿、是非とも一度見てみたかったのに」


 執事としてふさわしくない言動があった時、リナはグレアを鞭で叩いてしつけるのだ。その鞭には薄められた聖水が塗られ、彼にもダメージが入る。仕返しをしようにもリナは完璧なメイドであり、グレアが彼女に鞭を打つ機会などない。


 だからこそ、猫耳メイドの姿で恥ずかしそうにしている様子を見れば、多少の溜飲は下がるというもの。


 いつかリナに猫耳を付けさせる。

 グレアはそんな目標を立てた。


「リナがやってくれないから、猫獣人さんを雇おうかなって」


「しかしルシアン様。問題があります。獣人族は非常にプライドが高い種族。特に人族に使役されることを嫌います。ましてやメイドをやらせようなど、ほぼ不可能」


「ほぼってことは、完全に不可能じゃないってこと?」


「死にそうになっている獣人を助ければ可能性はあります。プライドが高い種族ですが、同時に一度受けた恩は必ず返す種族でもあります。猫獣人の女性の語尾がニャになったのは、はるか昔に獣人族の姫が魔族に攫われ、それを助けた勇者の望みだったからです」


「へぇ、そうなんだ。でも都合よく死にそうになってる猫獣人さんなんて、その辺にいないよね」


「奴隷を買うというのはいかがでしょう? この国にはほとんど来ませんが、外国では獣人族が奴隷として売りに出されることがあります」


「なるほど。この国では見たことないから、獣人さんが奴隷になってるなんて知らなかった。いいねぇ。さっそく明日買いに行こう」


「ただし探したところで見つからない可能性の方が高いです。そこでひとつ提案なのですが、私に力を渡して3日ほどお待ちいただけないでしょうか? さすれば確実に猫獣人の女奴隷を用意することが可能です」


「どうするの?」


「まず獣人の国を滅ぼします。国が無くなるので、行き場を無くした獣人たちが捕らえられて奴隷になります。それを買いに行けば良い」


「いい考えだけど、それはダメ。国が安定してるのって、人が成長するには大事なことだと思うんだよね。国がほろんだら、次の可愛い猫獣人さんが育たなくなっちゃうかもしれない」


 世界を滅ぼすために大悪魔カーディナルを召喚した少年のセリフとは思えないが、彼の中で矛盾はしていないらしい。


「それは……! 私としたことが、短慮な提案でした」


「グレアは長生きだから仕方ないよ。国が一度滅びても、放っておけばまたいつの間にか新しい国ができてたんでしょ? それを繰り返してきたのがこの世界だって、リナに教えてもらった」


「はい。しかしルシアン様の一生は、私たち悪魔族と比べれば一瞬のようなもの。であるなら現存する国とは、貴方の使用人を育てるための優れた農園です。いつかルシアン様が世界を滅ぼすその日まで、大切に維持しましょう」


「いいね! そうしよー!!」


 獣人王国ゼムリアはルシアンのための農園となった。大悪魔カーディナルに滅ぼされるという危機を、国民の誰も知ることなく回避したのだ。

 

「それはそれとして、猫獣人の奴隷さんがいないか探しには行こうね」


「承知しました」





───────────────────────


【あとがき】


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


面白い、続きが読みたいって思っていただけたら、

★★★で評価をお願いします!!

作者フォローもしていただけると嬉しいです!


キリの良いとこまで書けたし、10万文字超えたし、

ランキングもかなり順位落ちてきちゃってるので、

今後は毎週月曜の朝7時頃に更新となります!


本作は24万文字まで書いていく構想ですので、

引き続きよろしくお願いします。



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忍者の末裔は忍ばない

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ではでは~。

 

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