第十五章 新しい生活
美月の家は、どこまでも温かかった。
玄関を開けた瞬間、やわらかな匂いが出迎えてくれる。
「瑠璃ちゃん、ゆっくりしてね」
美月のお母さんが穏やかに微笑んだ。
「ありがとうございます」
「困ったときは、お互い様よ」
その言葉が胸に沁みた。
夜、美月の部屋で二人並んで布団を敷く。
「ねえ、瑠璃ちゃん」
「ん?」
「勇気、出したね。家を出るって、すごく大変だったでしょ」
「うん……でも、もう限界だった」
美月が私の手をそっと握った。
「これから、少しずつ楽になるよ」
「……そうだといいな」
その夜、私は久しぶりに深く眠れた。
誰かに怒鳴られる心配も、誰かの期待に怯える必要もない。
ただ、静かに——安心して眠れる場所があった。
翌朝。
学校の門の前で、桐谷が手を振っていた。
「よ、水瀬。昨日は大丈夫だったか?」
「うん。美月ちゃんの家、すごく居心地いいよ」
「そっか。ならよかった」
三人で教室へ入ると、数人のクラスメイトが声をかけてきた。
「水瀬さん、演劇部のこと聞いたよ」
「大変だったね」
「私たち、知らなくて……ごめん」
その言葉に、胸の奥がじんわりと温まった。
——一人じゃない。
たったそれだけのことが、こんなにも嬉しいなんて。
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噓吐き 夏宵 澪 @luminous_light
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