第18話「間の話」1
春燕は振り向きざま、
その小さな背中が廊下の向こうへ消えるまで、恭信と嬌は黙って見送っていた。
──そして。
「可愛すぎませんことっ!!?」
嬌は突然、爆発するように立ち上がった。
「あんなっ!あんな小さい身体で!小さい手で!
粥を食べた時のあの笑顔!!花丸!花丸ですわよ!!」
もう止まらない。扇をブンブンと振り回しながら、まるで乙女のように悶えている。
恭信はというと、茶杯を持ったまま楽しそうに軽く目を細めた。
「あの凌偉の素っ気なさ…!!怖がらせたりしてないかしら…!」
嬌は甥を思い出してはハラハラし、扇を胸に押し当てて見上げる。
「凌偉には、もっと積極的になってもらわないと…」などと独り言が始まる。
「あなたっ!私は大丈夫でしたかっ!?圧がかかっていませんでした!?」
今度は突然、恭信に向かって詰め寄る。
あまりの勢いに恭信の茶が少し揺れた。
「ははは。いつも通りだったから安心しなさい。」
恭信は穏やかに答える。
その落ち着きようは、嵐の中の岩のようだった。
「来たばかりだから…少しずつ寄っていって…!早く仲良くなりたいわぁー!!」
嬌は椅子の上でうずうずと身をよじり、
情緒の上がり下がりが止まらない。
さっきまでの憂い顔はどこへやら。すっかりテンションが戻っている。恭信は茶杯を口に運びながら、穏やかに笑った。嬌は朝から今日も絶好調だ――琳家の朝は、実に賑やかだった。
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