妹の記憶、病室の匂い、届かない夢。
都会の片隅で、ひとり歌う少女ハルカ。
誰にも聴かれず、誰にも評価されない夜の路上。
それでも彼女は、歌うことをやめられない。
そんな彼女の前に現れたのは、
生気のない男――自称「ゴーストシンガー」。
歌えなくなった人の代わりに歌う、
名前を持たない影の歌い手。
「下手くそだ」
その言葉は冷酷で、しかし的確だった。
夢を追う者と、夢を失った者。
光の中に立てない二人が、夜の街で交差する。
才能と現実、喪失と再生、その狭間で
「それでも歌う理由」を問い続ける物語だ。
音楽小説であり、
喪失と希望を描く静かなファンタジーでもある。