外に出ると死ぬので、移動要塞【俺の家】に引きこもったまま世界無双します。~戦略級の砲撃で敵を消し炭にした直後、家族になった美少女たちと囲む温かい食卓が最高すぎる~
第9話 プリアデの査定。意外な反応と意外なつながり。
第9話 プリアデの査定。意外な反応と意外なつながり。
ギルドマスター専用執務室の応接テーブル。
「はあ、本当に……。早く同じ年頃の男にでも目を向けて、少しは落ち着いてくれればいいんだが……」
特注のソファに身を沈める3メートルの巨人は、額に手をあて深々と息を吐いた。
俺とシルキア、そしてプリアデがお茶を飲みながら、ギルドマスターと談笑……もとい手のかかる姪に振り回されまくった。
さらには現在進行形でめちゃくちゃに振り回されているエピソードの数々を聞きつつ。
持ってきた資料をパパパパパパッ、とすばやくチェックし終えると。
メイジーは応接テーブルに座る俺たちのもとに、トレイを手に戻ってきて、にこりと微笑む。
「お待たせしましたぁ。やっと鑑定結果が出たですぅ。
D級冒険者、プリアデ・ペディントンさまの持ち込まれたオークの魔石、計312個はすべて本日討伐ほやほやの真品と判定されましたぁ。まぁ、わかってたことですけどぉ。
加えて、先ほどわたしが測定魔導具で確かめましたプリアデさまの周囲に漂う体内へまだ未吸収の魔力量。
ギルドが把握するオーク一体の討伐時に発生する吸収魔力量を計算し、ほぼ一致ぃ。
間違いなくプリアデさまはオーク312体の討伐者ですぅ」
そこでパッと、メイジーは花咲くような笑顔を浮かべる。
「おめでとうございますぅ! 冒険者ギルド規定に従い、一度の戦闘でオーク百体以上討伐の偉業を成し遂げられたプリアデさまには、オーク
そしてご希望どおり、全魔石のギルドへの売却ぅ。魔石が今日獲ったばかりの劣化なし新鮮最高品質のため、一つ三万G(ガドル)。
加えて、スタンピード参加優遇措置の売却時の一割加算により……しめて総額! なんとなんとの一千万G超えですぅ!
この額以上を一度で稼ぐには、A級冒険者でも討伐困難な竜を含めた伝説級以上の魔物を討伐する必要がありますぅ!
すごいです! 快挙ですぅ! なお売却額は、このギルドカードに入金済みですぅ!
そしてぇ、マスター・ゴルドガルド」
意外にも、メイジーの仕事の手際は鮮やかだった。
成人前のかなり幼い頃から冒険者ギルドに出入りして、見習い扱いで仕事を手伝っていたとさっきギルマスから聞かされたのは、伊達ではないようだ。
もちろん、その頃から変わらずゴルドガルドのオッサンにちょこまかとひっついているらしい。
ギルド職員はもちろん、都市テファスを拠点とするほとんどの冒険者とも面識があり。
ゴルドガルドとの関係についても、生暖かくも微笑ましく見守られているようだ。
…………んん? これゴルドガルドのオッサン、完っ全に外堀埋められてね?
さっきの話だと、メイジーの家族は当然のように応援一直線らしいし。
ちなみに、マジで余談だが。
魔力があり、そもそも人間そのものの生命力が強いこの世界では、血が濃すぎるとかはあまり問題にならない。
血に根差した特異な魔法や能力を維持しつづけるために、同族や近い血縁での婚姻を基本とする例もままあるらしい。
たとえば預言とかは、特に血が濃くないと力が弱くなりやすいらしいとか。
もちろん、ごくたまには外の血が混じったり混ぜたりすることもあるそうだが。
閑話休題。
何が言いたいかというと……なあ、ゴルドガルドのオッサン、人間諦めが肝心だぞ?
とかなんとか、結局は他人事だけど。と、俺がしみじみとぬるくなったお茶をすすっている間に。
メイジーが、一度プリアデから預かった魔法金属製のカードを恭しくゴルドガルドに差し出す。
受け取ったギルドマスターは、その責任ある役職に相応しい
「D級冒険者プリアデ・ペディントン。この度のスタンピードにおける第一戦功級の活躍、ご苦労だった。
都市テファス冒険者ギルドマスターであるこの俺、ゴルドガルド・カッツェの権限と名において──」
ゴルドガルドの大きな指につままれた、小さく見える魔法金属製の刻印章が輝きを放った。
あれは確か。
冒険者ギルド黎明期に、コーモリック家に連なる遠い遠いご先祖さまが発明した生体魔力認証式の──
「プリアデ・ペディントン! いまこの時よりおまえを飛び級で、B級冒険者と認定する!」
執務室を眩い光が激しく照らす。
それが晴れたあと、テーブルの上に置かれた銀色のカードの右上には、輝く“B“の文字が刻印されていた。
「おめでとうございますぅ。プリアデさまぁ。飛び級での昇級も、もちろん稀に見る快挙ですぅ。プリアデさまは、ギルドが誇る期待の新星ですぅ」
「ああ。メイジーの言うとおりだ。俺も大いに期待するぜ。未来の冒険者の星、新たなる英雄候補として」
にこやかにメイジーがぱちぱちと拍手して祝福し、ギルドマスターは強面をニッとゆがめて快活に笑う。
プリアデはギルドカードを震える手にとると、そのまま胸にぎゅっと押しあて、感極まったように静かに目を閉じた。
「おめでとうございます。プリアデさま」
「おお! すげえじゃんか、プリアデ! やったな!」
「ありがとう……! ヒキール、シルキア……! メイジーに、マスター・ゴルドガルドも……!
これで、あたしが自由になる道筋へのきっかけと、そして、かつてA級冒険者だった敬愛するお母さまに一歩近づけたわ……!」
そのプリアデの言葉に、対面のゴルドガルドがあからさまに眉を
「……ん? ちょっと待て。少し気になってはいたが、かつてのA級冒険者で、名字がペディントン、だと……?
プリアデ。まさかおまえ、ノーブレナ・ペディントンの、あのノーブレナさんの娘なのか!?」
「え、ええ。確かに、ノーブレナはあたしのお母さまの名前だけど……?」
ずい、と身を乗り出す3メートルの巨体。
思わずプリアデが、またものけ反りかけるが、背筋を伸ばしてなんとかこらえてみせた。
「マジか! 忘れもしねえ! 俺の青春の日の思い出だ……! 当時の若手の星、ああ、麗しのノーブレナさん……!
いまでも、はっきりと思い出せるぜ……! あの日、陽の光に照らされたあの金の髪の輝きと、息も絶え絶えで地面に倒れた俺を見下ろす青い瞳……!」
うっわ。なんか遠い目をして、
当時を思い出してか、なんか口調もちょっと変わってるし……って、ん? 息も絶え絶え? 見下ろす?
「そうだ! あれは、むせかえるような暑い夏の日だった……!
まだ15歳、成人仕立てほやほやの血気盛んな駆け出しだった俺は、無茶をしてこそ冒険者だと勘違いをし、あの日、無謀にも百体の魔物の群れに突っ込んだ……!
そして、三分の一ほどぶん殴り殺したところで、当時使っていた安物の手甲が壊れ、囲まれて完膚なきまでにボコボコにされ、ついに力つき、ぶっ倒れて動けなくなった……!」
陶酔したような表情を浮かべ、ゴルドガルドは続ける。
「そこを、『あなた。実力もないのにそんな無茶をして、死にたいのかしら?』
と颯爽と駆けつけた2歳年上のノーブレナさんに助けられたんだ……!
瞬く間に残りすべての魔物を斬り刻んでいくあのときのノーブレナさんの化物みたいな強さ!
たなびく金の髪! 血だらけの俺を見下ろした、あの鋭く細められた青い瞳……! いま思い出しても、ああ……! なんだかゾクゾクと身震いしてきやがるぜ……!」
当時を思い出したのか、3メートルの自が巨体を抱え、ギルマスがブルブルと震えだす。
……えっと。間違ってたらごめん。それ、恐怖じゃね?
あと、プリアデの母親も確かにすっげえけど。
駆け出しで百体の三分の一って、ゴルドガルドのオッサン。あんたも大概当時からいまも変わらず化物だからな?
「それ以来、俺は無茶はしても無謀はやめて、ついに、こうしてギルドマスターにまで上り詰めたわけだ!
いや本当に、ノーブレナさんは当時の俺の生命の恩人で、憧れだった! まさか、ノーブレナさんの娘に、当時ノーブレナさんと会ったこのテファスで会えるなんて……!
言われてみれば、確かに面影が……って、痛えっ!?」
おもいきり頬を膨らませたメイジーがゴルドガルドの太い腕を。やはり普通につねっても効果がないからか、両手全部の指を使っておもいきりつねる。
まあ
つんと澄ましたメイジーを一睨みしつつも。話が脱線しすぎたことに気づいたのか、ゴルドガルドはコホンと咳払いをする。
「いや、すまん。つい懐かしくてな。だが、そういえばプリアデ。いま、ノーブレナさんはどうしてるんだ?」
「……お母さまは、亡くなったわ。いまから4年前。あたしがまだ13歳のときに」
「……そうか、すまん」
「いいのよ。もう、過去のことよ。吹っ切れたわ。……お母さまのことは。ふふ、それよりあたしの知らないお母さまの話を聞かせてくれてありがとう、ギルマス」
小さく首を振ったプリアデは、母親が生きていた頃に想いを馳せたのか、遠い目をする。
ゴホン、とわかりやすく話題を変えるように、ゴルドガルドが咳払いをした。
「いや、それにしてもあれだな。さすがは、あの元A級冒険者ノーブレナさんの娘だな。プリアデ。まさかオーク相手のスタンピードで、300体殺しの第一戦功とは」
「ふふ、褒めてもらったところ申し訳ないけど、第一戦功はあたしじゃないわ。ここにいるヒキールよ。
というか、あたしの300体殺しも、半分以上はヒキールたちのおかげね」
薄く微笑み、メイジーが淹れ直した温かいお茶にプリアデは、ほうと息を吐く。
確かな達成感を噛みしめるように。
「…………何?」
ーーだが、プリアデのその答えに。
ギルドマスターの表情がいままでとは違い、あきらかに強張った。
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