現代日本を舞台に、政治・報道・個人の正義が複雑に絡み合う構図が非常にリアルで引き込まれました。
とくに「通信遮断」という静寂を“最も巧妙な支配”として描いた視点が秀逸で、情報社会に生きる私たち自身への問いかけになっています。
香坂の覚悟、桧山の葛藤、未来を見る梓と「今」を生きようとする迅
それぞれの立場が単純な善悪に回収されず、
人間としての弱さや迷いを抱えたまま進む描写が印象的でした。
また、政治的サスペンスでありながら、介護現場のエピソードや何気ない会話が物語に温度を与えており、冷たい権力構造との対比が物語をより深くしています。
今後、片山の“描いたシナリオ”がどこまで現実を侵食していくのか、
そして梓が「未来を見る者」から「今を選ぶ者」へどう変化していくのかを強く期待しています。
読み進めるほどに、読者自身の「正義とは何か」を静かに揺さぶる作品です。
続きを楽しみにしています。