好感度が分かる魔道具を手に入れたので、嫌われていると思っていたパーティメンバーの好感度を確認したら全員限界突破してた
笹塔五郎
第1話 好感度の上限って100なんだよね?
「さっさと来なさいよ、ノロマ」
赤髪の少女――クレナ・イヴリスは冷たく言い放った。
動きやすさを重視した装備に身を包んだ彼女の顔立ちは可愛らしいが、その表情は言葉からも感じ取れるように険しい。
「ノロマなのはいつものこと」
黒髪の少女――ルノ・クリッカーはそんなクレナの言葉に同調する。
クレナよりももっと動きやすさを重視しているのか、少し肌の露出も気になる――けれど、きっと本人は気にしていない。
表情からは読み取れないタイプだが、やはりクレナと同じように態度は辛辣。
「ふふっ、亀の魔物とどっちが遅いか競走してみるのも面白いかもしれませんね」
金髪の少女――サリエラ・ウォーベルは一人だけ、そんな風に笑顔で言った。
優しい口調と雰囲気だが、言っていることは普通に悪口である。
この三人は全員が『Aランク』の冒険者で、パーティのランクもAランクだ。
そんなパーティに所属している栗色の髪の少女――フィン・ヴェイルズは、唯一のDランク。
Eランクが冒険者としては最低位で、つまりは下から二番目。
Sランクが最高位になるが、そのレベルに達するのは数えるほどしかいない――だから、このパーティにいる三人は冒険者の上位層。
いずれも戦闘面、補助面でそれぞれ優れた分野を持つ三人に対して、フィンだけは何もない――言ってしまえば荷物持ちとして一緒に行動しているだけだ。
「ご、ごめんなさい」
フィンはただ、謝ることしかできなかった。
だって――自分はDランク。
足手まといにならないようにするのが精一杯だ。
けれど、現実――足手まといにはなっているのだろう。
魔物との戦闘になれば、基本的には前衛を担当するクレナとルノが魔物と戦い、魔法を得意とするサリエラが補助をする。
では、フィンは何をするのか――ただ、見ているだけだ。
隠れてろ、と言われたらそうする。
逃げろ、と言われたら逃げる。
指示に従って一緒に行動するだけ――やはり、足手まといでしかない。
最初の頃は違った――同じ村の孤児院で育った仲良しで、冒険者になる道を選んだ。
だからパーティも一緒に組んでいるわけだが、フィンだけが成長できなかった。
才能――その一言だけで片付けてしまえばその通りなのだろう。
けれど、取り柄がないのにパーティにいるのは正直、つらいものがある。
――いっそのこと、追い出してくれたらと思うことだってあった。
(……でも)
ちらりと、フィンは首に下げていたゴーグルで三人のことを見る。
このゴーグルは魔道具で、最近になってフィンが手に入れたもの。
示されるのは自身に対する好感度――当然、知り合いでなければ数値は0だ。
嫌われている場合はマイナスで表記されるらしく、正直見てしまえば傷つくだろう。
正直、あまり見ていて気持ちのいいものではない――だって、嫌われていることが分かってしまう魔道具だから。
けれど、その逆もあり得るということ――
(……好感度の上限って100なんだよね?)
そんな疑問が頭の中に過ぎる。
そう、魔道具は鑑定してもらって――その効果については分かっている。
嫌われていればマイナス――好かれていれば、最高値で100になるらしい。
100となると、そこにあるのは愛情に近いものらしいのだが。
先ほどからフィンに向かって辛辣な言葉を述べる三人の頭の上に見える数字は――『999』。
つまり、100を余裕で超えている。
きっと壊れているんだ――そんな風に思っていたけれど、どうやらそういうわけでもないことを知ったのもまた、つい最近のことだった。
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