第10話 朝ラー。つまりラーメンだ


商業都市サニム近隣の地図

https://kakuyomu.jp/users/patipati123/news/822139838339258832


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 神聖歴578年 夏の中月 1日



「フッ! フッ!」



 木刀仏恥義理ぶっちぎりを呼び出してから約3か月。毎日のように素振りを繰り返しているうちに、最初の内は振り回されていた木刀にも大分慣れてきた。まぁそもそも大人が振り回すように作られている木刀なんだから当たり前なのだが、明らかにこいつは俺の身長に対して長すぎるからなぁ。


 とはいえそれも最初の内だけで、今では見た目だけは一端に振り回せるようになってきている。はず。



「精が出ますね、タロゥ」


「しんぷさま」



 毎朝の素振りをしていると、レンツェル神父が水桶と布を持って声をかけてきた。レンツェル神父は時折、俺の素振りを見にくるのだが特に何かを言ってくることはない。というか基本的にレンツェル神父は聞かれたことには答えるけど、聞かれた以上の事には答えない。


 鍛錬をする上でなにをすればいいか聞いた時、レンツェル神父は薪拾いをしなさいと言っていたけど、それだってザンムに俺を連れていけと言っただけでそれ以上のアドバイスなんかは一切なかった。ただ、それでしっかり成長できたからこれがレンツェル神父なりの教育方針なんだろう。多分。


 朝の鍛錬を終えた後はザンムと一緒に薪拾いに行くのが日課だが、その前にやる事がある。


 朝ラー。つまりラーメンだ。



「きょうはさっぱりしたちゅうかそばセット(ライス・サラダ付き)だぞ」


「ちゅーかそば!」


「はい。いただきます」



 妹の分を可愛いキャラもののプリントがされたラーメン器の中に盛り付ける。このラーメン器は信力が余った際に試しにお子様ラーメンセットを頼んだ時に出てきたものだ。器だけではなく小さなプリンやスープまでついてきたので妹は非常にこのお子様ラーメンセットを気に入って、食事の時にお子様ラーメンセットを要求されることがある。


 ただ、分量が普通のラーメンに比べて足りないから、そこまで頻繁に食べさせられないのが現状だ。


 ズルズルと中華そばを口にする。中華そばは大体醤油ベースが基本のものが多いが、俺が好むものは魚介系を組み合わせた味わいの中華そばだ。あっさり目の味わいは朝ラーメンに最適で、今日の一日の活力が湧いてくるのを感じる。


 食べ終わる前にドレッシングがかかったサラダを妹と二人で分ける。妹は野菜が苦手だが、ドレッシングのおかげで何とか食べられる。サラダも食べないと栄養が偏ってしまうからね。


 さて、妹との食事が終わったら薪拾いに行く、のだが。炊事担当のエリザに信力で出した今日の分のパンを預けておく。これは夢の中で出てきたコンビニで販売していたもので、大袋に8個のパンが入っている優れものだ。お値段は信力3。



「ありがとうタロ。チビたちも喜ぶわ」



 エリザの言葉に一つ頷いて、外で待つザンムの元へ向かう。これは孤児院内の仕事があって外で食い扶持を稼げないエリザのような子や年少組のために、朝食として渡しているものだ。


 ここ数か月、色々試行錯誤した結果イールィス家から追加の支援を引き出すことに成功し、朝と夜にスープを飲むことが出来るようになった。だが、スープだけだとやっぱり腹持ちが悪いし、なにより妹一人が満腹だと年少組で浮いた扱いをされてしまうかもしれない。このパンはそれを防止する目的のものだ。多少余裕が出てきたら周囲にもおすそ分けをしないと評判が悪くなるし最悪村八分に合ってしまうのは、前世でも今生でも同じことである。


 まぁ、そんな悪評もものともしない実力があれば全てを黙らせることが出来るのも、前世と今生で同じなんだが流石にね。多少のボランティアで抑止できるものは抑止した方が効率的だろう。


 それに孤児院のお陰で記憶が戻るまで生き永らえることが出来たのだから、この孤児院には恩も義理もたっぷりとあるのだ。自分の命の恩は重いものだ。軽々しく扱えば自分の命を軽くするのと変わらない事になる。





 待たせていたザンムと合流し、ザンムに今日の朝飯といってコッペパンを渡す。代わりに銅貨1枚を受け取り、二人並んで籠を背負って森へと歩いていく。ザンムのように自分で稼げる相手には金をとる。これは孤児院内で決めたルールだ。森歩きのいろはを教えてもらった恩はあるが、時間回復するとはいえリソースが決まっている代物を無償で提供し続けるのはよろしくないからな。


 まぁその分身内価格で格安でパンを渡しているのだが。俺が信力で呼び出したコッペパンをもし街のパン屋で買えば10倍近い値段を取られかねない代物だ。いや、下手しなくてもこの街一番のパン屋でも作れないだろう。


 ザンムはこのふわふわした食感のパンのとりこになったらしく、毎朝薪拾いに行く際にはこれを歩きながら食べて森へ向かうようになった。くくっ墜ちたな(確信)


 森に到着したら早速薪拾いを開始――の前に籠から画板と紙、それにペンを取り出しておく。ある程度森歩きも様になってきたから、薪拾いがてら近隣の森の地図をつける事にしたのだ。


 これは数か月前のコボルトとの遭遇の際から考えていたことだ。あの時は無我夢中で走ってなんとか森から命からがら逃げだせたが、もしも事前に森の構造を熟知していたらもっと効率的に逃げることが出来たのではないだろうか。なんならコボルトの兵士たちに見つかる前に相手を見つけて逃げることも出来たかもしれない。


 あくまでかもしれない、程度の事だ。だが、可能性があるならば確かめてみる価値はある。それに森の構造を熟知するのは狩人技能の成長にも役立つかもしれない。まだ始めたばかりで薪拾いをしながらだと少し効率が悪いが、そのためにザンムには賄賂代わりに安くパンを融通してるのだ。多少は補助も期待できる。



「よし、じゃあ今日はあっちからちずをつくっていこう」


「ちゃんとまきひろいもやれよー」


「わかってるよ」



 ザンムにちくりと小言を言われながら、今日も日課の薪拾いが始まった。



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@winter2022さん、@Nissanさんコメントありがとうございます。


タロゥ(5歳・普人種男) 


生力12 (12.9)

信力26 (26.3)

知力7  (7.1)

腕力7  (7.2)

速さ11 (11.8)

器用9  (9.3)

魅力6  (6.2)

幸運5  (5.3)

体力13 (13.1)


技能

市民 レベル1 (42/100)

商人 レベル0 (68/100)

狩人 レベル1 (22/100)

調理師 レベル1(31/100) 

地図士 レベル0(8/100) 


スキル

夢想具現 レベル1 (85/100)

直感 レベル0 (51/100)


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