一章 死を告げる森、脱出
反乱軍の隊長とコーディアが一悶着している間も、レイラたちは追手をなんとか退けながら逃げ回っていた。
二十人は敵を斬ったか、という頃合いでローガンがレイラに話を切り出す。
「殿下。敵の待ち伏せが精細を欠いております。これはおそらく……」
「……えぇ、どうやら上手くいったみたいね。間一髪だったけれど」
「各々がた、陣形を変えますよ。魔女殿は占いをお願いします」
レイラとアズラエラを囲んで守るように陣形を組み直し、アズラエラの占い時間を確保する。
「……観えました!次の死の定めは2日後、
場所は森ではありません!
このまま迂回して小船を目指しましょう!」
「ふぅ……ひとまず助かったか」
「マリー、安心するのは分かりますが、気は抜かないように」
「さぁ、この森を脱出するわよ」
作戦の成功を確信したレイラたちは、逃亡用の小船を目指して移動し始めた。
レイラがその作戦を立てたのは、小屋への襲撃をかわした直後だった。
アズラエラの占いによって待ち伏せを先読みできるレイラたちは、反乱軍に接触することなく逃げ回ることが出来る。
コーディアほどの魔女なら、アズラエラの占いによって待ち伏せを回避していると気づくだろう。
では、その雇い主の反乱軍はどうか?
コーディアの占いによって指定された地点で待ち伏せていたのに、結局レイラたちは姿を現さない。
慣れない森の中を東奔西走し、その度に肩透かしを食らう。
特に気位の高い者が多い兵士隊長などは、
指揮権が自分にあるにもかかわらず、ポッと出の魔女の言いなりで兵を動かすことにいい顔はしないだろう。
そんな不満と疑心は占い合戦の回数を重ねるごとに膨らみ、いつかは思い至る。
この魔女は本当に味方なのかと。
一度疑ってしまえば、コーディアは急激に発言力を失う。
最初に成功させた待ち伏せも、信用させるための策謀に見える。
元々雇われの魔女と、王家への忠誠の誓いを破った反逆者の集まり。
疑心暗鬼に陥れば機能しなくなる。
レイラはそれを狙って、本命の小船を目指す前に橋を渡る逃走ルートを挟んでいた。
もっともここまで追い詰められるつもりはなく、せいぜい逃亡中の時間稼ぎ程度の保険だったが、結果的に保険に命を救われることになった。
「そ、それにしても、さすが姫さまです。
まさかコーディアを倒すのにこんな方法があったなんて」
「ありがとう。でも、私たちだけじゃ勝てなかったわ。あなたが居たおかげよ、アズラエラ」
「よし、小船は無事だな。殿下!どうぞお乗りください」
小船に乗って森を横切る川を渡り、先ほどの待ち伏せに遭遇してから30分後。
レイラたちは見事、反乱軍の追手を撒いて森を脱出した。
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