第2話 ダイチの過去
俺はクラスの窓の外をのぞいて遠い昔の記憶を思い出していた、おじさんとの思い出だ。
(いいか、命を落としたおまえを生き返らせたのは私だ。この命を大切にしなさい)
あの日、おじさんの発言の意味がわからなかった。でも今は分かる。
そう、俺は一度死んでいる。でも今は確かに生きている、なぜならおじさんのおかげで生き返ったからだ。
そんなおじさんに恩返しをするため、何年も探し回った。ありとあらゆる場所を駆け巡り
そしてようやく、この学園の教師と言う噂を聞きつけた。
だが三年間、この学園中探しても見当たらない……気づけば卒業間近だ。
あの人は一体……
すると俺のクラスの担任が俺の肩を強く叩いた。担任と目が合うと彼はあきれた顔でため息をついた。
「川崎、大事な実習の話を聞かないとはどういうことだ。卒業したくないのか?」
やべ、今日は大事な実習の説明があったんだ。毎年、三年生は卒業前に実習と言う名のテスト試験がある。これに合格しないと卒業できない。
俺は前を向いて担任の話を聞くことにした。
「今週末、探索者ライセンスを取る者にダンジョン攻略のために訓練を受けてもらう」
訓練という言葉に疑問を感じた。
まあダンジョン攻略は命がけの探索だから訓練くらいは必要だよな
担任は話を続けた。
「そして訓練を受ける奴はレベル5以上の優等生を三日前、先に受けてもらう」
三日前って今日じゃん。
しかもレベル5以上、学園では高レベルだ。
まてよ、レベル5ということは俺も入っているのか。まあいいやさっさと終わらせよう。
俺は探索者になってあの人を探す。
今でも覚えている。
短い茶髪に渋い顔、ローブを着ていた。
あの人に恩返しするために俺は強くなって、今度は俺があの人を救うんだ。
「具体的な説明も終えたところで今日は下校してもらう。」
しまった、肝心な所を聞いていなかった。
あーもう!何やってんだよ俺は。
担任は書類を片付けて教室を去った。
困ったな、これじゃ卒業出来ない……
と思うところだが、俺は頼れるAIがいる。
スマホに搭載されている自作のコミュニケーション型AI、『テラ』だ。
「なあテラ、担任はどこが実習先っていったんだ?」
[それくらい自分で聞くワン。でもダーリンのためなら仕方ないネ。……この学園だワン]
学園で実習をするのか。
なるほどね、だからレベル5未満は早く下校するのか。
と言うことは今日のいつかに始まるんだな。
[ボッチのダーリンはボクがついているから心配しないでワン]
さらっとひどいこと言わなかったか?このAI
誰がボッチだよ。
事実だけどさ、いわないでくれよ。
だいぶ傷ついたぞ。
簡易的な顔で悪魔みたいな事いうAIなんかやだな。
テラはニコッと俺を見て笑う。
はあ、友達がこいつしかいないのは大変だ。
「そういえばテラ、あの人は見つかったか?一応聞いておくけど本気で探しているからな」テラは困った表情を浮かべた。
[ダーリン、それがどの情報にも乗ってなくて困ってるワン。キューン]
そうだよな。俺でも見つからない人だ。
これだけ探してもいない、一体どこにいるんだよ。
[ダーリンの過去を教えてよん、そしたら分かるかもしれないワン]
俺の過去?そうだな……
「俺が小学生の時、森のダンジョンに無断で入ったときモンスターに襲われて、そのままなすすべなく倒れて」
「その後、気がついたらおじさんが俺を抱えてて走っていた。きっとあのモンスターから逃げていたんだなって」
(少年よ、君はこれからたくさんの人生が待っている。ここで死んでしまってはいけない。私の力でよみがえらせたのだ、わかるな?その命で未来を切り開け)
そのあと何か言っていた気がするが思い出せない。
[なるほどネ、それでは前提を書き換えサーチするワン]
頼むぞ、あの人に会ってありがとうをいいたいんだ。今度は助けたいんだ。
[ごめんネ、わからなかったワン]
これだけ探しても検索しても見つからない。
また振り出しか。
[ワンニング!ワンニング!]
どうしたテラ!なにか問題が発生したか?
[校舎内に別学園のIDを持つ人物が侵入しました。……どうするワン!?]
カチコミか?なるほど、大勢の生徒が帰ったあとを狙ったのか。頭がいいのか悪いのか。
これから大事な実習なんだ。お帰りいただかないと。
俺はテラについて行ってヤンキーたちの元に向かった。
「おい!誰だ俺たちの校舎に入るヤンキーは!」そういった瞬間目に入った人物は、
想像を超えるほど肉体がでかく、まるでゴリラのような体に緑色のモヒカンがゆらゆらと揺れる。
「かっ、かっこいいですねそのモヒカン」
俺は冷や汗をかき、恐る恐る近づいた。
「いいだろ、三時間かけて毎朝セットしてるんだぜ」
そういい、ヤンキーは腕を大きく振りかざした。だが甘い。
俺は次元を自由に操れる。
空間を歪めて盾にして攻撃を防いだ。
「モンスターではないから30%で行かせてもらう」
そういい俺はヤンキーに立ち向かった。
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