第11話
「なぁ、静」
「ん?」
「今度の土曜日。泊まりにいってもいい?」
「いいよ」
土曜日。
その日、仕事が早めに終わった。優樹は六等星にいく。
「あら、優樹君」
六花が笑顔で迎えてくれる。栗色の髪、緑の瞳の太陽騎士団で人気のお姉さんである。
ちなみに葵は知的なお兄さんで、女性人気が高い。黒髪に青い瞳がいいらしい。
優樹は、小さい頃から、静以外に興味がない。静は、わりと物事に執着しないので、忘れられないように、一緒にいた。
小学生の頃、夏休みあけに、クラスの女子に誰?と言っていたのを見て、ゾッとしたのをよくおぼえている。
「遅くてごめんね?」
「いえ、俺が早かっただけですから」
レジで謝る六花に言う。
「店の中でも見ててね」
「そうさせてもらいます」
近くの棚を見て、本当に品物が増えたなと思う。以前は少ないけど高品質でやっていたが、今は高い品質を保ちながら、数を増やしている。
綺麗な箱に納められた札。様々なサイズのビンに入った霊薬、魔石を使用したお守りや武器、様々な道具がある。
「品物が増えましたよね」
「えぇ、静君のおかげよ。私と店長だけじゃ、集められる物は限られているの。本当にありがたいわ」
六花は柔らかく微笑んだ。
「ゆうちゃん、早かったね」
ひょっこりと静が店の奥から顔を出した。
「思ったより早く済んだ」
「穂波さん、強いもんね。ぼく、炎が地面を這っていくの初めて見たもの」
いつだったか、ゴーストと戦う穂波を見た。刀を一振しただけで、炎が広がってあっと言う間にゴーストが、消えた。
「彼女は強いよね。炎の女帝とか言われているし」
葵は棚に石を並べながら言う。
「よし、今日の仕事は終わり。二人は終わった?」
二人が終わったと答え、それぞれ荷物を持つ。戸締まりをして、店の外で葵が言った。
「今日もご苦労様でした。明日もよろしくお願いします」
「はい。明日もよろしくお願いします。お疲れ様でした」
「今日もありがとう。明日もお願いします」
三人で挨拶をして、葵と六花は表側に帰っていった。
「……あの二人は付き合ってるのかな?」
歩きながら、なんとなく聞く。
「まだ、みたいだよ」
「いい感じなのになぁ」
「ぼくもそう思う。今日、晩ご飯どうする?買う?作り置きでいいなら、家にあるけど…」
「それを食べてしまって、お前は大丈夫なのか?」
「大丈夫だよ。無ければ作るし、こっちにもコンビニがあるから」
「じゃあ、作り置きがいいな」
「わかった」
「お邪魔します」
「どうぞ」
家にあがって、優樹が見たのは、標本だった。
雑誌くらいの箱に、淡く光る枝、結晶花、石、羽根などが美しく入れらている。
「これ、凄いな」
「そう?」
「売ったら?」
「これを?」
静はリュックを壁に掛けて、手洗いうがいをした。優樹も同じことをして、コンビニで買ったアイスを冷凍庫に入れる。
「夜になったら、外に行けないから、気をつけてね」
「それ、本当なんだ」
「夜になると、建物のまわりに結界が出来るから、出たら入れないかも」
「わかった」
「ご飯は冷凍庫のでいい?」
「いいよ」
「おかずは、ハンバーグと切り干し大根の煮たのとコンビニのサラダ、みそ汁はレトルトでいいかな?」
「いいよ。あ、今日はトマト煮なんだ」
「ハンバーグは煮込めば安心じゃん?」
生とかなくて。
「わかる。タッパーのままでいいか?」
「うん。切り干し大根はどれくらい食べる?」
「多めで」
優樹と自分の分を器に盛り付けて、テーブルに置く。優樹はご飯をレンジにかけた。
「なんか、こういうの久しぶりだよね。凪と三人で、こうして晩ご飯食べたよね」
「そうだな」
優樹は、少し考えて、話した。
「凪がさ、太陽騎士団まで来てさ……。かなめを殴って、静と俺が助からなかったら、絶対に殺すって、言って、帰ったんだって」
「え…かなめ君、生きてる?」
「生きてるけど、本部の壁が、その、一部ひび入ってる…」
かなめは凪に殴られて、入口から反対側の壁に吹き飛び、めり込んだらしい。
まるで漫画かアニメのようだったと、団員がしみじみと語ってくれた。
「謝りにいった方がいいかな?」
御椀にお湯を注ぎながら言うと、優樹はいかなくていいと言った。
「そんなの気にしてたら、戦闘職は務まらない」
「そっか…」
わかったと頷いて、席について手を合わせた。
「いただきます」
「いただきます。あー、なんか久しぶりだ」
優樹はご飯と切り干し大根を少し食べて、ご飯の上にサラダとハンバーグをのせて食べた。
「好きだねぇ、その食べ方…」
「家でやると、母さんが嫌がるんだよな」
優樹の母は、料理が上手い。どんぶりじゃないのだから、普通に食べて欲しいのだろう。
「やめたら?」
「最近は、やってない…そんなに」
少し目をそらして言う。
それがなんだかおかしくて、静が笑った。
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