世界一を求めて! WSRG本戦開幕!


 8月、国連が所有しているとある島にスピリットモンスターズに魂や信念を掛けた者達が一堂に集う。


「お、おぉ!!ここがワールドスピリットリアルグランプリの会場か!!」


 C級のバトラー折節猛火おりふしもうかは色々な手続きを終えてWSRGの会場へとやって来た。

 なにをしに来たのか?そんな事は言うまでもない、このWSRGにバトラーとしてやって来たのならばやることは1つ!表と裏、2つを合わせての本物の世界最強を決める戦いに身を動じる。要するに出場者だ。


「ちょっと、田舎者って見られたらどうするの!」


「あ、悪い悪い」


 WSRGの開催地に足を踏み入れたので興奮が止まらない猛火に呆れる少女。

 B級バトラーの夕凪若葉ゆうなぎわかば、彼女はWSRGの日本予選で敗退したのだがスピリットモンスターズに関してとても博識なので猛火のサポーター枠を用いてWSRGの開催地に足を運んだ。

 WSRGと言うあまりにも大きな世界大会、猛火は興奮しているのだが若葉が納めた……が、ここでスピリットモンスターズの世界最強を決めるのだからとまた熱が込み上げてくる。


「ここに世界中の猛者達が……くーっ!早くバトルがしたい!いや、しに行こう!」


「残念だけどダメよ」


「ええっ、なんで!?」


「ここは公式な世界大会だが表と裏を含めた文字通り世界最強を決める大会だからだ」


「才賀!!」


 早くバトルがしたい。開催地の入国審査を終えたので誰かとバトルを申し込もう、ここには強い奴等が沢山居るぜ!と燃えているのだが若葉がそれはしてはいけないと猛火がバトルを挑みに行く前に止めた。

 なんで止めるんだよと思っていれば才賀が現れた。オフィシャルS級バトラーの才賀も当然の様にショップ大会の地区予選から挑んではこの世界大会本戦にまで駒を進めた。


「来ていたのね」


「それはこっちの台詞だ。県大会で負けた君が居るとは」


「戦術アドバイザーとして来たのよ!!」


「そうか。確か1人だけサポーターを置くことが出来る決まりだったな」


「おう!若葉は俺のサポーターだぜ!……才賀は?」


「あいにく、オレにはサポーターなんて不要だ……それよりも猛火、WSRG開催中は選手は自身のサポーター以外と野試合を禁じられているのを知らないのか?」


「えっ!?そうなのか!」


「あんたね、大会のマニュアルちゃんと読みなさいよ」


 軽く顔合わせをした才賀、若葉、猛火。

 とりあえずバトルを挑みたいという思いを持っている猛火に才賀は試合以外のバトルを禁止にしていると言う事を教えれば知らなかったと驚く。大会規定のマニュアルを1から10まで暗記している若葉はやっぱり読んでいなかったと呆れている。


「でも、なんで?ここにはスゲえ奴等が沢山居るんだろ?」


「決まっとるやろ、だからこそや」


「あっ!来福!お前も来てたんだな!」


「アホか。俺が日本大会2位でお前は3位、才賀くんが1位で日本代表に決まったんやろ?おらん方がおかしいやろ」


「そう言われればそうなんだけどさ……で、なんでダメなんだよ?」


 日本のA級バトラーの壱葉来福いちようらいふくがバトルをしてはいけない理由を教える。


「猛火や才賀くんみたいな表のええ子ちゃんは基本的には問題はあらへん。ただこの大会には裏の世界の住人も出とる。そいつらは当然、闇討ちをして公式戦に出れへん様にすんのは勿論のこと色々とバレなきゃ反則やないイカサマをしとる。まぁ、裏の世界の住人にも一応はバトラーとしてのプライドはある。けど、中にはそれでもする奴がおるし命賭けなアカン、闇のバトルとか勝手に仕掛けて公式じゃない番外試合を行う。この世界大会では闇のバトルやそういうバトルを仕掛けるの禁止にされとる。ちゃんとしたバトルの舞台はしっかり用意しとるんやからそこで戦え、余計なことすんな言う話や」


「でも、俺、アンティルールとか闇のバトルとか関係無しにして普通にバトルしたいんだ」


「それがアリなんやったら俺かてやりたいわ……けどな、ここは文字通り本物の世界最強を決める大会や。お前、なんで3位なん忘れたんか?」


 日本代表としてWSRGに出場している才賀、猛火、来福。

 この3人の日本代表を決める大会では才賀が優勝、来福が準優勝、猛火が3位決定戦で勝利して3位に食い込んだ。そして準決勝で猛火を倒したのは来福だった。


「アンティルールで他人のレアカードを貰うんが性に合わんから倒した相手から1枚も貰わんかった、デッキに入れると決めたカードを常に信じとる言うてサイドデッキにカードを1枚も用意しとらんかった。確かにお前の腕は本物やけども、そういうバトラーとして一般的な事が出来とらん。実力だけで言えばお前はオフィシャルのS級クラスや。そんなお前が日本のA級バトラーの俺に負けたんはそういうアホな事をしとったからや」


「それは……」


「日本大会で才賀くんに決勝で待つだなんだ色々言うて、最終的に挑むことが出来へんかった。それを経験してまだ同じ事を言うつもりか?そんなんやったら日本大会4位の夜長楓葉よながふうように代われや。日本大会の時からなんも変わっとらん言うんやったら、あいつの方がまだ強い」


「っ!…………若葉……選手村ってどっちにある?」


「はいはい、案内するわ……まぁ、ありがとう」


「礼を言うなら自分が教えんと」


 この大会は勝ちを求める大会であり勝たなければ意味が無い大会だ。

 猛火は楽しいバトルを求めていたのだが、バトルを楽しむのでなく勝つことを優先する者達が集っている。純粋な実力だけを見ればオフィシャルのS級バトラーと同等以上の実力を持っている猛火はその辺やとある試験が原因でB級以上のランクに上がることが出来ていない。この世界のシビアなところを色々と理解出来ていないので来福が発破を掛けた。その事に気付いている若葉がお礼を言ったが来福はお礼を言われるような真似はしていないと流した。


「しっかし、まぁ……ヤバいな。流石は本物の世界一を決める大会。表と裏の見本市や」


「これは少し無粋な真似じゃないか?」


 WSRGの出場者及び出場者に1人だけ付けられるサポーターの入国審査的なところを見ている来福と才賀。

 出場者はスピリットモンスターズで世界に挑んだ事がある者達ならば知らない方がおかしい者達だらけだった。


「アメリカの賞金王ヤーレス・ツァイト。才賀くんと同じスピリットモンスターズ協会公認のオフィシャルS級バトラーでヨーロッパエリアのチャンピオン、ウィンター・ジェネラル。裏の世界からは中国の李 薫風リ クンフー……そして皆既日色エクリプスの最高幹部及び腕自慢達」


「やはり出てくるか……随分と頭に入っているな」


「それそうやろ?俺はスピリットモンスターズに選ばれた人間やない。才賀くんや猛火は魂が宿るカードの魂を見ることも魂の力を感じることも出来るけど俺は出来へん……生まれ持っての才能がちゃう。なら、頑張れば集めれる情報集めやそれを頭に叩き込む努力を死ぬ気でするしかあらへん」


 才賀はスピリットモンスターズに選ばれた人間だ。猛火もスピリットモンスターズに選ばれた人間だ。だが、来福はスピリットモンスターズに選ばれていない人間だ。魂が宿るカードから発するエネルギーを感じることも魂が宿るカードの声を聞くことも出来ない。ただただひたすらに凡人でも出来る努力をしまくった。そのおかげで日本のA級バトラーとなれた。


「結局のとこ、俺が猛火に勝てたんは俺のデッキと倒した相手からアンティルールで手に入れたカードとサイドデッキに入っとったカードが猛火にとってこの上なくやりづらい相手やったから。要は搦手や」


「だが、それでも世界にまで来ただろう?」


「言うとくけど、俺、この大会は優勝したいとは思っても出来るとかの自信あんまないで?なんせ俺はA級はA級でもオフィシャルのA級バトラーやない、日本のA級や。この大会では妨害工作とイカサマは禁止されとるから、それらをメインにした裏の住人は出とらんかここまでこれとらん。けど、人間性や犯罪履歴なんかの問題で表に出ない純粋に強い裏の住人達は出とる。そいつらの実力はオフィシャルA級バトラー以上や」


 ホンマに我ながら場違い感酷いで。

 来福は大会に出場する出場者を見て自分が最も劣っているバトラーなのを思い知らされていた。


『才賀よ、分かっているとは思うが油断はするなよ。ああ言うのが一番厄介なのだ』


「上には上が居るのを知っている。自分の才能も知っている。それでも壁に挑み続けている……紛れもなく来福は本物の一流のバトラーだ」


 【剣舞聖帝 タイガ】は来福はスピリットモンスターズに選ばれてはいないものの、最も油断出来ない存在だと才賀に忠告をする。

 過酷な日本代表を決める戦いで自分の次に強い2位、スピリットモンスターズに対して真摯に向き合っているものの自分がどういう人間なのか理解しており上には上が居るのを知っている。のらりくらりで掴みどころが無いと感じるが、来福を本物の一流のバトラーであることを才賀は認めていた。


「それで、感じるか?」


『うむ……黒のスピリットの7つのエースカード、我等十二使徒、他にも魂が宿るカード、スピリットモンスターズに選ばれし者が一堂に集っている。しかし、何処の誰がどのカードを持っているかは不明だ』


「なに、カードが集まっているとだけ分かれば問題は無い……確実に奴等は本戦に出てくるのだから」


 危険極まりない黒のスピリットの7つのエースカード、それと同格の十二使徒、それ以外の魂が宿るカード、それを使うスピリットモンスターズに選ばれし者、操り手、それらがちゃんと来ているのかの確認等を才賀は【剣舞聖帝 タイガ】に行った。

 黒のスピリットの7つのエースは来ている。自分と同じ十二使徒も来ている。それ以外にも魂が宿っているシリーズのモンスターも、選ばれし者も。しかし何処の誰がどのモンスターやどんなデッキかは分からない。

 分からないがそれが確かに存在している言うのであれば才賀はこの大会で優勝する事を考えた。この大会では嫌でも彼等と戦うのだから戦わなければならないのだと。


「まさかここでWSRGの世界大会を行うとは思いもしませんでしたね」


 一方その頃の末広はと言えば、WSRGの事務仕事をしていた。

 急遽決まったWSRG、開催地である国連のとある島なのだが実はこの島は別の目的で使われている島だ。今回は本来の使用用途とは違う目的、WSRGの開催地として使うことになっていて驚いている。


「仕方ねえだろ、土地がねえんだから」


「まだ玩具常識改変力が完全に支配できていないってところすね……にしても、ホントにクソゲーだな」


 WSRGを開催する土地が無いし建築物を建てる時間が物理的にも無い。

 龍一がその事を指摘するが、玩具常識改変力が完全に支配された場合は様々な事を無視してWSRGを基準に物事を考えられた。まだ玩具常識改変力は世界を飲み込んでいないのだと認識し、そしてクソゲーだと末広は言った。

 龍一と共にしている仕事の内容はこのWSRGの各国の地区予選から本戦に至るまでに使用されたスピリットモンスターズを生み出した冬夏春秋が認知していないカード。そのカードの大半が魂が宿るスピリットモンスターズのカード、そしてそのカードをサポートするカードだ。


「スピリットモンスターズはクソゲーだ……だからこそ、オワコンにする突破口がある。末広もそれ承知で計画練ってるんでしょ?」


「そりゃ勿論……ただまぁ、若干大丈夫なのかと成功した時の罪悪感が」


「世界の為だ。少数を犠牲にするのは多々あるしこのやり方に文句があるならばそれよりも良い結果を出せるシステムを考えて上に進言するだ」


 スピリットモンスターズをオワコンにする為に動いているのだがそれでオワコンにする事が出来るのが可能なのかと成功した時の罪悪感、末広はそれが気になっていたが龍一は世界の為ならば少数を犠牲にするのは止む終えなし。文句あるならばそれよりもいい結果を出せるプラン考えてこいと至極真っ当な事を言った。

 そしてWSRG本戦が開幕をした。1回戦の注目の対戦カードはオフィシャルA級バトラーのオータムvs日本のC級バトラー、猛火。オフィシャルA級バトラーであるオータムは日本のC級バトラーを見下していたが猛火は軽々とオータムを倒した。

 日本のC級バトラーがオフィシャルのA級バトラーが倒した!と言う事はWSRGの本戦出場者達の中で話題になったりならなかったり。ここでは表のランクや知名度は一切関係無い、強いか弱いかの世界だと認識している者がそこそこ居たので話題は膨らまなかった。しかしオフィシャルのA級バトラーとして認定されている者達はランク等でバトラーの実力を見てはいけないのだと思い知らされた。

 そこからはトーナメントは激しさを増した。黒のスピリットの7つのエースモンスターを操る皆既日色エクリプスがオフィシャル公認のS級バトラーを倒したり、逆に皆既日色エクリプスの最高幹部の1人をスピリットモンスターズに選ばれていない来福が倒し一矢報いる大物喰いジャイアントキリング、オフィシャルS級バトラー同士の対決、裏の世界最強と言われるバトラーと表の世界最強と言われるバトラー同士の激突、1つの試合で1つのドラマが巻き起こり数々の奇跡が起きた。

 え?デュエル描写的なのはって?そんなもん作者に書けるわけねえだろう。


「遂に来たか……」


「ああ!ここまで長かったぜ!」


『さぁ!本戦出場者を決めた1025人の中で残されたのは2人!1人はスピリットモンスターズ協会公認のオフィシャルS級バトラー!四季咲才賀!そしてもう1人は無名でありながらも破竹の勢いで勝ち進んだ日本のC級バトラー!折節猛火!』


 スタジアムがわき立つ。

 ここまで数々のドラマを繰り広げていた2人が遂に激突をする。勝つのはオフィシャル公認のS級バトラーの四季咲才賀か?それともC級でありながらもS級と同格以上の実力を持っている折節猛火か?その結果は神様でも分からない。しかしその結果を今から証明する。


「………………?」


「どうかしたの?」


「今なんか司会の人、おかしな事を言うとらんかったか?」


 スピリットモンスターズの世界最強を決める大会、オフィシャルS級バトラークラスを倒したものの途中で敗れた来福とサポーターではあるが選手ではないので選手及び選手関係者席に座り試合を観戦しているのだが来福がなにかおかしいのだと違和感を感じた。


「おかしいって……特におかしいことはないわよ?」


「…………」


「ちょっと、なに考えてるのよ!?」


「ああ、すまんすまん……ただどうしても違和感を感じるんや」


 来福はなにか違和感を感じた。来福だけでなく知性に優れている者達も不思議な違和感を感じている。

 しかしそれがなんなのかは分からない。分からない上に今から才賀と猛火のバトルが始まろうとしている。コレは見なければならない試合だと試合に集中をした。


「いくぜ!」


「来い!」


 最強格のバトラー達のバトルが今、開幕する。

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