売春癒師バイシュンイシ

@kurosetu

ケイラと私

2035年8月、16歳の女子高生が花火大会に出かけた帰り道、友達と別れ自宅までほんの数十メートルというところで突然23歳の男に襲われレイプされた後放置。


2035年12月、38歳の女が息子の友達である14歳の男子中学生をマッサージをすると口巧みに誘い繰り返しわいせつ行為に及び逮捕。


2036年9月、43歳の男は自宅アパート近くの路上で「モデルに興味ない?」と声をかけ小学5年生の女児を自宅に誘い入れ玄関でわいせつ行為に及んだが女児が大声を出したため思わず首を絞め殺害。




「あったね~こんな事件。腐る程」


「ずいぶん前だよね。

 小さい頃テレビのニュースで流れてて

 なんか怖かったの覚えてる」 


「最近なくない?」


「うん、そぅかも。

 売春癒師のおかげじゃない!?」





2045年8月、夏休みも終盤になりケイラと私は図書館で課題の追い込みをかけていたが、新聞という昔一般的にあったという紙に文字が書いてあるという代物にすっかり見入っていた。


「私も売春癒師になりたいなぁ」

新聞を眺めながらケイラが言った。


「国家試験あるよ~難しそう!」

「でもかなり給料いいっていうじゃん!」

「医者と売春癒師ってどっちがお金稼げる   の?」


「ん~、売春癒師でしょ!!」



16歳ともなると将来のことについての話も多くなり大人たちがプレッシャーをかけてくる。

最近の人気職業は、売春癒師。

男女共に人気で高給だけど国家試験に合格しないと免許が取れないから狭き門らしい。

何より、人の身体を満たし、心を救い、人を癒す。とても尊い仕事だと思う。


「私にはなれないかな〜自信ない。ケイラなら大丈夫かも!ケイラは頭の回転が速いしコミニュケーション科はトップレベルの成績。保健体育の学科実技試験共にA判定。そんでもって風邪ひとつひかない健康な体。向いてるかもよ」


ケイラがニヤッと私の方をみて頷く。



「ねぇそーいえばさ恋愛ってなんだっけ?」

「はっ!?久し振りに聞いたその言葉」

「でしょ~!忘れるでしょ!」


「そんな時はAI3に聞くかぁ〜」


図書室の窓際に座っているAI3に強い日差しがさしている。


「あっ、アイミ〜おはよっ」


「ねぇアイミ、恋愛って何だっけ?」

ケイラがぶっきらぼうに話しかける。



「恋愛とは、特定の相手に対し性的欲求を含んだ信頼関係を持ちお互いを特別で大切に思うこと。もしくはそういう関係になりたいと願うこと。それら一連の気持ちやそれに付随する行動などを指した概念   だよ」


「へぇ〜さすが~」


ケイラと2人でアイミに拍手を送っていると、すました顔でまた自分の課題を進めている


「まだまだ訓練が足りんな!」

ケイラがニヤニヤしながらアイミに喋りかけたが聞こえなかったのか何の返答もない。

私たちは顔を見合せ分かったような分からないような「恋愛」とやらに謎が深まるばかりだった。



AI3はAIロボットで私達のクラスに訓練に来ている。エーアイスリーじゃ呼びづらいから私たちはアイミと呼んでいる。知識は十分だと思うけれどいまいちコミュニケーション能力が足りない。



「アイミはまだまだ勉強中なんだよね~」

「で、分かった?」

ケイラがいきなり肩で私の左肩をど突いて来たので前につんのめると、ケイラはまたケラケラと笑ってから「恋愛したくなったの?」と私に不思議そうに尋ねる。


「ケイラはそう思ったことない?」

とケイラの質問には答えず質問返ししてみる。


「小学生の頃は好きな人がいた記憶がうっすらあるんだけど、それからは恋愛ってないかな〜

あんたと毎日一緒にいて楽しいし!信頼できる親友がいて大好きなひとたちががいて、だらだらしたりどっか行ったり、売春癒師行ったりして心も体も満たされてますから~」


ケイラは自慢げに鼻の穴を広げて私をわざと見下す様に上から言った。

「そっか」

私はなんだか嬉しくなりケイラの鼻の穴を見ながら笑い混じりに答えた。



「ライトなら恋愛してるっぽい」

「ライトってケイラのお兄ちゃんだよね?」

「そうそう、あいつ古風?なんだよね昔から」

「へぇー」












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