二面性

暁月 学

二面性

 それは、住宅街の角を曲がったときに起きた。


 僕はそれまで二重人格というものを信じていなかった。でも、僕は見てしまったんだ。友達が人を殺害して、楽しんでいるところを。急いでその場を離れた。そんなはずはない、僕は小説とか映画の中の話だと思っていた。でも、いつもならあんなに優しい友人が包丁で人を殺して笑っていたんだ。しかも、声を出して。信じられるはずがない。僕はそっくりさんだろうと思って、詳しく見てみた。でも、服装は今日会った時と同じで声もいつものあの声。僕はおかしくなってしまいそうだ。


 まだ僕はあいつのことを信じている。でもあいつがやっている所を見た、それが事実なんだ。一旦あいつの家に行ってみる事にした。まだ目撃してから時間が経っていない。もしあいつが犯人なら、家にいないと思う。


 俺は、車のエンジンをかける。燃料メーターを見ると、ほとんど燃料がない状態だ。一旦ガソリンスタンドに寄って行くしかない。でも、ここから一番近いガソリンスタンドはあいつの家へ行く道の途中にある。車のエンジンをかけてあいつの家を目指して進み始めた。ガソリンスタンドへ向かう道は山の中を通る旧道と、少し遠回りだが新しい新道がある。僕は旧道を選んだ。少しでも近い方がいい。旧道にあるトンネル

はいつ通っても少し怖い。俺はライトをハイビームに変更してトンネルに入る。中はとても暗い。そんな中で、ランニングウェアを着て、走っている人がいる。俺は驚いた。こんなところを人が走っているのを見たことが無いからだ。


 ガソリンスタンドで給油をして、そのまま直進する。


 あいつの家が見えてきた。窓明かりは……、ついている。やはり僕がおかしかったんだ。


 インターホンを鳴らすとあいつがすぐに出てきた。部屋着に着替えて、タオルで頭を拭いていた。

「さっきまで、風呂に入ってたんだ。どうしたの?」

「いや、別に急ぎではないよ。明後日出す提出物の内容ってどんなふうにしたかなって気になって。」

「急ぎじゃ無いなら、あしたでもいい?」

「まぁ、いいよ。じゃあ、明日。」

 俺は安心した。あいつが犯人では無いのだ。


 家へ帰ってからも、僕はあの殺された人のことを考えていた。明日ニュースで報道されたら、警察に行った方がいいのかな。でも、僕が幻を見ていたのかもしれない。最近寝るのが遅いからな。まぁ、一旦明日の朝、警察に行ってみよう。


 その時、あいつからLINEがきた。

「明日、朝からどこか行かない? ついでに提出物のことも話したいし。」

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