第2話「新たなる仲間の出現」
海子と他の志望者が集まった場所で試験の開始を待つ。俺はすでに女友達を作れたことが大きく心に余裕が出来る瞬間だった。これほどの心強い味方が付いてくれて自身でも安心感を抱ける。それが心の負担を減らす要因となり、そもそもの試験が開始する時間帯をを待ち侘びる。
そしてしばらくが経過した後の話。試験を始める合図のような声掛けが集まった志望者の意識を向けさせるための指示が出る。その声が示す先を志望者たちは自然と視線を向ける。視線が一斉に一人の人物を集中して目視されると今回の試験が行われる内容が伝えられた。
「今から試験を始めるための説明が行われる! 集まってくれた諸君はちゃんと説明を聞き入れて試験の内容を理解してもらう!」
(いよいよ開始されるんだな? この試験で大きく俺たちの進路が決まる。これは全力で勝ち取るしかないだろう)
俺は試験が開始するために必要となる話を聞き逃さないように意識したいと思った。ここで理解に不備が生じた場合の不利は正直試験を通る際の邪魔だと考える。それを抱えた状態で試験に挑戦する行為がどれだけ困難であるか分かっている。だから俺は万全を尽くして挑みたかった。
「まずは試験を残る合格者の発表だ。試験で残れる合格者は合計六十人を予定している。今回の参加者は全員で三百人。その中から選抜された者だけが入学を許される。それでは今から試験の説明を始める。聞き逃すことがないようにお願いする!」
そんな一言が発せられた時に俺はやる気が起きるような感情を抱いた。実際に戦闘は個人の中でも好きだった内容の一つと言える。この瞬間が俺の闘争心を引き起こした。
「始めの第一試験はチーム戦になる。これは三人一組で行われるグループマッチを要とした試験である。この試験を残るための条件は十ニグループが一つの敷地内で対戦してもらう。その中で一グループの三人が先に倒れた組から落選となる。十二グループから九組の落選が決まった時点で対戦は終了を宣言させてもらう。残った三組は第二試験の通過が決定する。取り敢えず今は第一試験を通過する条件だけを告げた。残る試験は後から説明したいと思う。今の説明で分かった者は誰でも構わない。三人で一グループを作りなさい。話は以上だ。それじゃあ早速グループ決めを開始してくれ!」
それだけ試験に対する説明が施されるとグループ決めの開始が合図して周囲が動き出した。もちろん入学試験を受けるために集まった人たちの中で互いの実力を知る者は殆ど存在しないはずだと考えていた。仮に熟知している奴がいても組んでもらえるかなんて分からない以上は都合の良い組み合わせは決まらないだろう。
取り敢えず全員で六百人の志望者が集結している。つまり、三人でグループを作るなら一人も余ることはないと断言しても問題はない。それを踏まえて俺は周辺を一時的に見渡してから再び視線が特定の人物に戻る。
「やっぱり、俺たちは組まないなんてあるのか?」
「その回答は決まっているはずだよ? もちろん組むしかないでしょ!」
「それじゃあ俺たちはグループを組んで行くで選択肢は間違ってないな?」
「当然!」
グループを作る際に海子と揉めることはなかった。この段階だと互いの実力は知らない同士であることは否めない。だから、正直に言えば両者の中で片方が足を引っ張る可能性はどうしても除外できない事項となることは自然と確定してしまう。
しかし、俺は自身がどれだけの実力者であるか知っているつもりだった。そこで持ち得る実力が彼女を支えられると信じていなければ当然ながら試験を受けることをしなかったはずだ。それだけの覚悟が整っていない半端者が今回の試験に参加している可能性が高いと師匠から聞かされていた。
ちなみに俺の師匠は凄腕の異術師である。異術師業界でも屈指とも言われる人材で多くの【異害物】と【不正術師】などの敵たちを相手して来た経験者だった。彼女の功績は国中で噂されており、俺は偶然にも襲撃された村で命を救われた身から保護してもらった恩がある。救命された時に明かされた特異体質が原因で自身が戦えないといつか魔の手が襲い掛かる可能性は回避できないと言われたことを理由に鍛錬を積み上げた。それが現在の試験を受ける理由でもあり、さらなる高みを目指すための試練として【王立総合異術学院】の入学が望ましいと師匠に勧められて来た。
そこで出た【異術師】とは言わば神秘的な術を駆使して一戦を交える種族が総称で表される専門用語である。
ちわゆる異術師が対峙する対象は【悪魔】【妖怪】【霊獣】【純獣】【怨霊】などの名称を持つ【異害物】が主体となっている。
他にも俺の生きる世界は【種族】と呼ばれる生物上でも高位の存在とも言われる生物が国を構えて動かしていた。この種族に関しては八種類で構成される生物だと一般常識として定義がある。
中でも俺は【人族】と呼称される種族で異術師としての適性確率はバランス型だと生物学の常識が定着する存在。主に人族は他の種族と子を作る習性が多い。それは【混血】と呼ばれており、紡がれる歴史の中で血は交わる関係性を持つ。俺が【純血】である事実は偶然だから大して意味はない。しかし、先祖を辿れば分かる通り、本来は混血だと言える血縁が存在する。それでも徐々に血は薄まって行く末路が辿られて現在は純血と判断されている。
俺たちは残る一人を探すために周辺が相談してグループを組んで行く様子を窺いながら彷徨う。周囲の奴らはすでにグループが組まれている様子が窺えて焦る気持ちが生じる。この瞬間から脱するために彷徨った末に偶然が俺たちと巡り合わせる。
「ねぇねぇ! 申し訳ないんだけど、ちょっと良いかな?」
「——んぅ?」
背後から肩を叩かれて振り返った先に立つ一人の青年と視線が合った。彼は俺の視線を受けて即座にグループを作りたいと志願して来る。
そんな目前の人物を俺は青年と捉えたが、実際だと【彼女】と呼称する方が適切だったことは自己紹介されて分かった事実である。
「やぁ? 僕は古賀鳴花。実は入学試験を一人で受ける予定が故にグループが組めなくて困っていたんだよ。お願いだから組んでくれないかな?」
(——え? 一瞬男性かと思っていたが、意外と外見で決めちゃいけないところたったみたいだな? まぁ、名前で女だと分かって良かったかも……)
内心で鳴花を青年と勘違いしていたことは本人に告げなかった。何せグループになってくれると言い出してくれた存在を勘違いで失いたくないから黙っていた。根本的に性別を間違えるところを相手が嫌悪していた場合を踏まえて黙秘することが鉄則であると思考した結果が後の話を損なわない理由を繋がるだろう。だから、本音は言わないで相手を嫌悪させない手段が適切であると思って行動した。それらは今後の活動で大きく行ったことの歓喜となる末路は凄い良い話だと思える。
とにかく俺は鳴花がグループとして組んでもらえる理由を提示して置きたかった。それに対する反応を彼女は無自覚を通して表した。
「やったぁ! この先で仲間が出来なかった時を迎えるなんて嫌だったからね! 私は今回を期待して来たつもりだから無事に一歩が踏み出せたことに喜びが抑えられないよ! それを踏まえて一緒に勝ち上がろう!」
(鳴花の気持ちは俺と似ているところが見られる。鳴花と同じ気持ちで挑戦することを決めた俺にも合格したいと思えて仕方がない。ここで鳴花が参戦してくれるだけで試験が合格する未来は見えて来るな)
鳴花が大声で勢いを見せると俺は内心で少し安心感が抱けた。そもそも鳴花と組めたことが運命にも思える点が声を掛けられて良かったと感じる瞬間だった。
後は自分のグループがどれだけ上り詰められるかが最大の問題点となる。俺以外が異性だと言う事実を除いて支障はないだろうが、それでも気が引き締まる理由は性根が交戦を望んでいるからだと考えて止まない気持ちが溢れる。
「まだ他のグループは発表されていない。もしかすると試験が始まる前に公表せれるかも知らないと言う可能性があった。それを待つばかりの時間が凄い長いような感覚を味合わされて身体を動かしたいと願っている自分が存在していた。
そして十五分を時計の長針が差した時に俺たちは試験が行われる会場を案内された。
そこは広大とも言える敷地は全て試験を行うために用意されたらしい。それだけの規模を誇る敷地で今から合格を賭けた一戦が始まる。
「各グループは敷地内の指定された位置からスタートしてもらいます。その位置から別のグループを探して見付けた相手は即座に攻撃を仕掛けても構いません。相手が戦闘不能状態に陥った時点で脱落が決定です。仲間と相談した上で敷地内を駆け巡った先の相手を倒して回るサバイバル形式の試験となります。もちろん命を奪う行為は止めてください。以上で説明は終わりです」
(どうやら他の十一グループは探した先で交戦する必要性がある。グループ内の仲間と別れて戦うことも出来るが、実際に複数が囲って来た場合はピンチになる。基本は三人で固まって探す方が良いけど、俺だけが別行動を起こすと第一試験は突破できるだろう。それの解決は最初だけ三人が纏まって動いて行くしかない……!)
内心で巡らせた思考が最初の攻略法を見付け出す鍵だと言える。開始する前に準備時間を置いた上で作戦会議が済ませた段階を整えて進行させる方針を取った。
「最初は様子を見て動きたいと思う。第一試験は各グループから三組だけが残って次に進める。つまり、この一戦が第二試験に上がる鍵となる。ここで三人が敗退した時は不合格が言い渡される。だから、出来るだけ三人で生き残る意識を持つことが勝利に繋がるんだろう」
「分かっている通り、相手は全員で三十三人。その中から最低でも二十八人は倒す必要が求められる」
「取り敢えず私たちが扱える異術を確かめた方が良いでしょ? まずは昴から教えてくれるかな?」
「分かった」
早速一戦が始まる前に三人の異術が確かめられる。その中で異術の開示は俺が一番だった。先に開示する番を頂いた俺は自信を持って彼女たちに異術を明かした。
「俺の扱える異術としては正術なら【電流操作】と【火炎操作】だ。他に霊術だと黒い影を発生させて操る【黒影操作】が一つ目。二つ目は召喚術の【紫羽鳥】と【毒牙犬】が片方ずつ。最後に【遅延区域】と呼称される結界術が多少の出力で扱えているはずなんだよな? 最後の結界術は半径三メートル範囲内に踏み入った対象者は行動が遅れる効果が付与されている。しかし、未完成が故に遅らせる速度と持続時間が微妙すぎる。これだと実践で使えないだろう」
「結界術だと取得自体が難しい。これを取得する際は長期間の修行が必須となる。それが少しでも使えるなんて凄いことだよ!」
「けど、昴の言ったことが確かだと本戦の使用は禁じた方が良い。未完成の状態で駆使した時に途中で効果が切れたり、そもそも発揮されない場合を予測して今回は取りれないでね? これが敗北に繋がる可能性は大きい」
「けど、他の異術だけでも十分に戦える。正術は基本二つが扱えれば才能が期待される。だから、とにかく期待しているわ!」
初めて俺が駆使できる異術を知った彼女たちは二人とも安心感を抱いたような表情が浮かぶ。後は二人が扱える異術の開示と作戦会議が出来た時が準備完了と言えるタイミングだった。
俺の開示が終わった後に明かしてくれた人物は鳴花である。やはり、初対面とグループを作った時の楽しみは相手の異術が聞けることだと思う。単純に相手が扱える異術を聞いて色々と対策が練ることが出来る。しかも、今回は交戦する時に知って置く必要性のある話だ。それを踏まえて俺は聞き逃さないための集中力が頭を回ると思う。
「私が開示する異術から行くよ? まずは正術なら【火炎操作】と【鋭質強化】と【水流操作】の駆使が可能かもね? 後は霊術の中でも【氷冷術】が扱える。けれど、それは単純に氷結を展開させる時の方向が定めにくいが故に確認が必須でもあることが難点。他にも獣術の【天牙狼】を備えているわ。これは風圧の操作が同時に可能とする異術なの。もしかして役に立たないかも知れないのが心配だなぁ⁉」
「いや、そこまでオーバーに心配する必要なんてなくないか? だって三つの正術が取得しているじゃん! それだけでも相当の手練れだと窺う奴が多いだろ?」
「それだけじゃないわ。個人術式の方にも魅力が満載よね? 氷結と風圧を同時に緻密操作した時が特に強い。それが現状で出来なくても交互に出す際の判断力が試されることは確かだね?」
「何だか過大評価にしか思えない感想だったかもぉ~」
「それじゃあ最後に残った鳴花が開示して作戦を立てよう。もう時間が迫っているはずだからな!」
「うん!」
そんな風に鳴花の開示が始まる。覚悟を決めたような瞳を向けて来る鳴花は深呼吸の後で理解が出来る範囲で簡単に説明を添えた開示を施す。
これが終わった後の作戦会議は初だと言う理由が大きく個々に纏められるか不安を抱いてしまっていた。しかし、三人は冷静にしっかりと作戦が示す結果を考えて練り上げる段階を遂行して見せる。これが本当に入学資格を持った者だけに現れる本質だと内心で起こった気持ちが多少の自信を持たせてくれた。
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