学園異能ファンタジーの王道を往きつつ、緻密に練られたキャラクター群が織りなす現代群像劇に引き込まれます。
記憶を失くし、夢の囁きに導かれる「造られた妖精」の少年・風悪。彼が辿り着いた「切ノ札学園」で待っていたのは、一癖も二癖もある14名のクラスメイトと、秩序を司る冷徹な組織「XIII」の影でした。
特筆すべきは、風の描写の鮮やかさと、日常に潜む“魔”が牙を剥く瞬間のカタルシスです。夜騎士や王位といった仲間との共闘、そしてミステリアスな少女・四月レンとの緊念ある邂逅。青春の輝きと、逃れられない運命の重さが絶妙なバランスで描かれます。
風が吹き抜けるその先に、どんな真実が待つのか。目が離せません!
物語の“空気”がとてもよくできている作品でした。
キャラクターたちの会話の軽さと、背後で静かに膨らむ不穏さのバランスが絶妙で、読んでいてページをめくる手が止まりません。
人間関係の距離感の描き方が自然で、特に風悪と周囲のキャラの“温度差”が心の奥でじわっと広がる感じが好きでした。
説明ではなく、視線や一言の会話で世界観の深さを見せてくるところ、作者さんの力量を感じます。
そして、最後に向かって静かに積み上がっていく“影”の演出がすごく上手い。
あの薄暗い気配だけで、読者は次を読みたくなるはずです。
引き算で魅せるタイプの作品だと思いました。
続きを楽しみにしています