第41話 初めてのダンス
舞踏会当日。
政陽と桜華は馬車に乗って魔王城にやって来た。
桜華は昨日出来上がったばかりの最新流行のドレスに真珠のネックレスをつけている。
魔王城に着くと政陽が桜華の手を取り舞踏会の会場までエスコートしてくれる。
舞踏会の会場の扉を開けると沢山の魔族の貴婦人と殿方たちが舞踏会を楽しんでいた。
政陽と桜華が会場を歩くと多くの視線が桜華に集まる。
桜華は緊張で心臓がバクバクと音を立てていた。
「桜華。まずは九曜に挨拶だ」
「はい」
政陽と桜華は魔王の玉座に座っている九曜の前に来た。
「九曜。舞踏会に招いてくれたこと感謝する」
「おお、政陽か。お前がこういう席に出席するのは珍しいことだな。桜華も楽しむがいい」
九曜はお酒も進み上機嫌のようだ。
そこへ三魔王子の一人災破が政陽に近付いてきた。
「大公様。お久しぶりです。そちらの美しい姫君をご紹介いただけませんか?」
災破はにこやかに桜華を見る。
桜華は災破に見つめられて身震いした。
人を値踏みするような目つきだ。
「災破。この女性は桜華という私のパートナーだ。桜華、彼は災破魔王子だ」
「桜華殿。災破と申します。以後お見知りおきを」
「はい。私は桜華と申します。よろしくお願いします」
桜華は淑女の礼をする。
「大公様も隅に置けませんなあ。こんなに美しい女性をパートナーとするなど」
「私が望んで側に置いているんだ。手出しは無用だ」
「大公様のパートナーに不用意に手出しはしませんよ。もし桜華殿を大公妃に迎えるようなことがあればお祝いに駆け付けます」
「ああ。その時はご招待しよう」
「ありがとうございます」
災破は一礼すると離れて行った。
「政陽様。今の方が三魔王子の一人ですか?」
桜華は小声で政陽に確認する。
「そうだ。九曜の子供の中でもっとも魔力が強いと言われている。母親の身分も高いしな」
「なるほど」
そこへまた一人桜華たちに男性が近づいて来る。
「これは大公様。大公様が舞踏会に出席されるのはお珍しい。こちらの女性の影響ですかな。ぜひご紹介いただきたい」
「雷牙か。この女性は桜華。桜華。こちらは雷牙。魔王子の一人だ」
「桜華殿。美しい貴女のお姿を拝見でき光栄です」
「ありがとうございます。桜華と申します。よろしくお願いします」
「なんと可憐な花のような方ですな。大公様がお心を寄せるのも納得できます」
雷牙は笑っているが目は笑っていない。
桜華のことを言葉では褒めているが大公の相手には相応しくないと思っているのかもしれない。
「では舞踏会をお楽しみください」
雷牙が去って行くと桜華は息を吐きだした。
「大丈夫か?」
政陽は心配そうに桜華に声をかける。
「大丈夫です。少し緊張してしまって」
「無理もない。初めての舞踏会だからな。一曲ダンスでも踊るか?」
「セイとダンスですか?」
「舞踏会に来て一曲も踊らないわけにはいかない。大丈夫。練習通りやれば踊れるよ」
政陽は桜華の手を取る。
そしてダンスを踊る場所に桜華を連れて行く。
そこで桜華は初めてダンスを披露した。
政陽のリードがとても上手で桜華の体はクルクルと回る。
舞踏会に来ていた客たちは滅多に踊らない大公が女性とダンスをする姿に驚いている。
しかし政陽と踊っている桜華は楽しくなって周りの目に気付かない。
笑顔で踊る桜華の姿も男性陣から熱い眼差しの対象になっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。