第40話 舞踏会の準備
桜華が舞踏会に参加すると決まった日の午後。
桜華は日向が呼んだドレスの仕立て屋に採寸をしてもらっていた。
ドレスは政陽がくれたものがあったからそれでいいと桜華は言ったのだが日向は「ドレスは最新流行の物でなければ政陽様の横には立てません」と言って急遽ドレスを作ることになったのだ。
「やはり桜華は青いドレスが似合うな」
桜華の瞳の色は青い。
それに合わせてドレスも作ることになり体に合わせているドレスを念のため政陽に見てもらった。
「そう。セイが良いっていうならこれにするわ」
「承知しました」
仕立て屋たちが桜華の言葉に頷く。
「一週間で仕立ててくれ。間に合うか?」
政陽の言葉に仕立て屋の主人が頷く。
「お任せください。必ず仕立てます」
「よろしく頼む」
仕立て屋が帰り桜華と政陽はお茶を飲む。
「魔王城の舞踏会ってどんな感じですか?」
「魔族の貴族が集まってくる。九曜の子供も参加するが気にするのは三魔王子だけでいい」
「三魔王子?」
「九曜の子供の中でもっとも魔力も権力も持った三人の魔王子のことだよ」
「そんな方がいらっしゃるのですね」
「桜華は舞踏会に出たことはあるのか?」
「いえ、ありません」
桜華は正直に答える。
「そうか。では貴族の令嬢たちに気をつけないといけない」
「令嬢にですか?」
「ああ。女はここぞとばかり着飾り有力な男の目に留まりたがる」
「そうなんですか」
政陽はお茶を飲みながら渋い顔をする。
「自分をアピールするために桜華にちょっかいを出してくるかもしれない。私もなるべく桜華の側にいるようにするが女は女同士の付き合いもある」
「大丈夫です。皆様と仲良くしますわ」
「桜華。君は天族というだけで目立ってしまう。魔族は基本的に天族を嫌っている。それでも舞踏会に行くか?」
「はい。私はセイといつまでも一緒にいたいと思っています。そのためには魔族の方々と付き合わなければならないことも分かっています」
桜華は真剣な顔で答える。
桜華も天界にいた頃社交界は女の戦場だと聞いたことがある。
天界の社交界でもそうなのだから魔界の社交界はもっと露骨に桜華を攻撃してくる人物がいてもおかしくない。
魔族は力が全ての基準となる。
有力な男性の寵愛を受けたいと思う女性は多いだろう。
政陽は大公である。
魔王の次に偉い人物だ。
大公妃になりたいと思う女性がいても全然おかしくない。
でも桜華も易々と政陽の隣を明け渡す気はない。
「まあ。確かにいつまでもこの神霊宮に隠れ住むわけにはいかないからな。だが桜華充分気をつけるんだよ」
「はい。セイ。分かってます」
桜華はニコリと笑った。
「政陽様。桜華様のネックレスをお持ちしました」
日向が箱を持って部屋に入って来る。
「ネックレス?」
「ああ。さっきのドレスに合うネックレスがあったのを思い出してね」
政陽は日向から箱を受け取り蓋を開ける。
中には大きな真珠をあしらったネックレスが入っていた。
「まあ、素敵」
「これを当日はつけなさい。これは間違っても怪しい物じゃないから大丈夫だよ」
「ありがとうございます。セイ」
桜華は大事そうにネックレスを受け取る。
段々と舞踏会のことが楽しみになってきた。
「じゃあ、次は社交界の勉強の時間ね」
「勉強の時間?」
「日向様に魔界の社交界のマナーを教わるんです」
「そうか。日向は魔界の社交界で認められている唯一の天族と言ってもいい。日向なら先生にピッタリだな。よろしく頼むぞ。日向」
「はい。政陽様。では桜華様。まずはダンスの練習をしましょうか?」
「ええ。それじゃあ、ちょっと行ってくるわね」
桜華はネックレスを棚にしまうと日向と一緒に部屋を出て行った。
「ここは桜華の頑張りに期待するしかないか」
政陽は一人呟いた。
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